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『奇跡のシンフォニー』、『火垂るの墓』

昨日は、終日お休みをいただきました。勝手な自主研修と出張でなんだかクタクタ。そろそろ劇場で映画を観て均衡を保たないと…。

ということもありましたが、気がつけば、水曜日。映画1本1000円のレディースデイだったんですよね。これは今日を逃すことはできない。Movixの「おさきにネット」で座席指定ができますので、まずは上映予定を調べます。

で、これっと思ったのが『奇跡のシンフォニー』。予告で気になった作品でした。今週で終了というのが決め手になりました。それと、せっかくだから『火垂るの墓』も観ちゃおう。2本立てで行こうということで決定!いそいそと支度をして出掛けました。

『奇跡のシンフォニー(August Rush)』 (2007アメリカ映画・劇場)★★★★☆

『チャーリーとチョコレート工場』で見たあの純真無垢な笑顔に再会?それが、天才音楽少年エヴァン(オーガスト・ラッシュ)となって天から舞い降りた…そんな感じだ。映画って、やってくれる。
日常のありとあらゆる音が彼にとっては交響楽として響いている。そんなオープニングシーンにいきなり心がさらわれてしまった。風にふかれて渦巻く麦畑と一体化するシーンだ。まだ、楽器という表現ツールを知らないエヴァンにインプットされ貯まっていく音楽の元素。「音楽はどこから来る?」「空からさ。ただ聴くだけでわかるんだ。」…。11年とちょっとの間、純粋に音が自分とまだ見ぬ両親とを繋いでいると信じ続ける少年の真心がピュアに伝わってくる。
この映画で扱っている音楽がノンジャンルである。クラシックだったり、ロックだったり、はたまたゴスペルだったりレゲエもソウルミュージックもっていうのがいい。だから音楽を愛するすべての人々に好感を持って受け入れられるのではないかな。そして楽器を弾けようが弾けまいが、楽譜が読めようが読めまいが、音楽が私たちの中に喜びをもたらすのだという「真実」が後押しをしてくれる。
一人の男にとって一夜の恋が11年の歳月を超えて人生の変更を決定し得るものなのかとか、教会に迷い込んだストリートチルドレンがその音楽的才能を認められたとして、かのジュリアーノ音楽院に入学し得るか、また在学6ヶ月という期間で11才の少年が野外コンサートで演奏するシンフォニーを作曲し得るか…などという当然起こる疑問や突っ込みはこの際ナンセンス!!そんなものは隅っこに追いやって観なければならない映画だ。
本作は純粋に音楽の素晴らしさを確認させてくれる名作といっていよいだろう。


火垂るの墓』(2008日本映画 劇場)★★★☆☆

小学生のときに原作を漫画で見て、涙した。こんなに悲しい物語があるのかと心に染みたものだ。大人になってアニメができた。節子の声にリアリティが加わり、また涙した。その実写版。これは観ずにはおけない。公開の日に観ようと思ったが叶わず、今回に至った。
上空から写された(設定の)最初の空襲の映像。CGだとは分かっていても、アニメにはないリアリティが感じられた。そして雨の中妹を背負ってたどり着いた焼け跡の家には母の姿は無かった。町会長に案内された、夥しい重傷者が寝かされている簡易病院、避難所の公民館だろうか。口々からうめき声が発せられ、死に瀕した匂いが充満していた。上半身を包帯で巻かれた母に名を呼ばれても受け入れることができず逃げ出す清太。母のものも含め、遺体を大きく掘った穴に投げ込み一斉に焼却する場面では、清太やその周りの役者たちの無表情の演技に肉親の虚無感がにじみ出ていた。親の庇護のもと豊かな生活を送っていた兄妹は、母親の言いつけ通り、遠縁の親戚に身を寄せるも、父の不在、母の死によって、人としての正当な扱いを受けられずにネグレクトされていく。貧しさゆえに崩壊するプライオリティ。おばさんは心底悪い人間では無いはずだが、そうせざるを得ない極限状態が形成されてしまったのであろう。また、人間味の豊かさを象徴していたはずの校長先生がご神体を焼いてしまった咎で自害に追いやられるという不条理。こうした凄惨なエピソードのパッチワークによってあの戦争のむごたらしさが十二分に込められた映画だ。
実写版ということで、省ききれなかった血のイメージ、傷の痛みに少し減点。原作にあった泥のぼた餅のシーンが石のご馳走によるおママゴトに換えられていたのとサクマドロップの缶底の飴かすを水で溶かして飲ませるシーンがカットされていたのが残念。期待の名場面だっただけに勝手ながら減点対象としました。役者はメインの4人が本当に上手く演じていましたね。その点はおすすめです。
by my-colorM | 2008-08-07 12:21 | 映画DVD見聞録 | Trackback | Comments(2)
Commented by ジュエル at 2008-08-08 06:31 x
mayusanの『火垂るの墓』のレビューを読んでいたら、幼い頃繰り返し読んだ、原爆の悲しい実話集のことを思い出し、なんだか泣けてしまいました。
Commented by my-colorM at 2008-08-08 08:09
栗原貞子の詩集「生ましめんかな」など、この時期、鮮烈なインパクトをもって思い出される作品がたくさんあります。