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「自分色」の提案…指導の事例

前回に引き続き、「自分色」の指導を考え、今日、もう一つの小学校の授業で話したことをまとめて記しておきます。


…今日は、お話の絵の完成を目指しています。とても大事な時間なのですが、あえて私の話を聞いてください。今日は「自分色」という考え方をみんなに提案したいと思います。

「自分色」とは何かをわかって貰うために、その反対の色は何だろうということを考えましょう。そう、私がいつも言っている「絵の具屋さんの色」、つまり絵の具セットにあるチューブそのままの色を自分色の反対の色と考えています。

この間、実は、みんなが絵の具箱にあるチューブから絵の具を絞り、そのままの色を使って絵をかいているところを、私はとても気になりながら見てきたんです。それで、みんながどれだけの色を使えているのか、考えたいと思います。

だいたいの絵の具セットは、せいぜい12色ほどの色しかそろっていないのではないでしょうか。パレットに絵の具をしぼり、そのまま画用紙にぬりつけていく。実際には全部のチューブを使っているわけでもありませんから、色数としてはほんの数個しか作品に使ってないということになりますね。

さて、人の目を研究している人のある説によると、成人、つまり大人の人の目では、なんと、750万色の色のちがいを見分けることができるといわれています。750色ではありませんよ。750万色です。どうですか?凄いでしょう?人間はそれだけの色を見分けることができる。なのに、表現する、つまり絵を描くときは12色足らずの絵の具を使っているに過ぎないとしたらどうなのでしょう。実際、今、みんなの絵には何色ぐらい使っていますか?せっかく見分ける力があるというのに、絵に描くときには使わないというのでは、これは「宝の持ちぐされ」といっても言い過ぎではありませんよね。

そこで、色の広がりや深まりをどんどん経験していくために、私はみんなに「自分色」という考え方を提案したいと思います。

「自分色」をたくさん増やしていくために、3つのポイントで考えたいと思います。


それは、

「色を混ぜてつくろう」
「色の並べ方をくふうしよう」
「色はたしかめて使おう」

です。

図を見てください。

(黒板に赤・黄・緑・青4色のチョークを使い、混色の模式図として色相環を示します。小さい4つの円をハッチングで塗り、2色の間にも同じくハッチングし、円は8個かいておきます。赤と緑、黄と青は両矢印の十字で結びます。へリングの反対色対といったところです。紫のチョークはありませんのでマンセルのような5つの基本色は使いませんでした。「物理補色」のことを考えるとマンセルの方が合理的なのですが…。心理4原色の赤・黄・緑・青、心理補色のP.C.C.S、物理補色のマンセル、子どもたちにとってどれが一番混色・配色のイメージとして自然に受け入れられるのか、なかなか簡単な問題ではありません。)

この図からは絵の具を混ぜたときの変化を見ることができます。色を混ぜることを「混色」といいます。

たとえば赤と黄を混ぜるとオレンジができます。これらの色は似ている色ということになります。ほかにも黄と緑を混ぜると黄緑が、青と赤を混ぜるとむらさきができますね。こうしてできた色は似ている色の仲間です。このように似ている色のことを「同系色」と呼びます。

ところが、黄と青を混ぜた緑はチューブの緑よりもかなり濁った色ができます。赤と緑は混ぜたら一体これは何色なのかと訊かれても、はっきりしませんね。見た感じで全く似ていない、このような色は反対の色ということにしましょう。これを「反対色」と名付けます。

「同系色」を混ぜる時、たがいに同じ分量ずつを混ぜると2つの色の中間の色ができます。赤と黄ではオレンジ、赤とオレンジでは赤みがかったオレンジとなります。

ところが、これらの色は一方が少ないとあまり変化がありません。同系色を混ぜるときは、変化がわかるぐらいの分量を混ぜる必要があります。

では、「反対色」を混ぜるとどうなるでしょう。たがいに同じ分量を混ぜると、にごって灰色っぽくなり、いったい何色なのかがはっきりしないことが多いのです。

ということから反対色を混ぜる時には相手の分量を少なくして、少しずつ色の変化を見ながら調整していくといいのです。反対色の混色からは、元の色に比べて、落ち着いた深い色がつくれるはずです。

ところで、混ぜたらどんな色になるかわからないという人が結構いるでしょう。そんなときは、いつも「たしかめながら」少しずつ経験をつんでいくことが大切です。いろいろと試してみることがみんなの時期には必要なのです。いろいろとたしかめることであなたの「色の世界」は無限と思えるほど広がっていくでしょう。
 
また、様々な色を並べることを「配色」といいます。

似ている色どうしを並べると、まとまりがあり、落ち着いておだやかな感じがしてきます。赤やオレンジ、黄などを並べると暖かく活気のある感じがしますし、青やその同系色を並べると、冷たくて落ち着いた感じがします。このように同系色のグループによって、絵に「寒暖の感じ」を付け加えることができるようですね。

では、反対色を並べるとどんな感じがするでしょう。混ぜるとにごる性質がある反対色ですが、これらは、並べると強さを感じさせます。特に明るい黄と暗い青などの組み合わせははっきりと形を見分けることができ、目立って注目を集めやすくなります。配色もいろいろとたしかめながら経験をつむことが大切です。

さて、配色の力をのばすためには何も絵の具を使わなくてもできることがあります。自分の身の回りにある様々な物に目を向けてみるのです。いろいろな物を見て、きれいだな、すてきだなと思ったときに、その色に注目してみるのです。どんな色の組み合わせなのかをたしかめて覚えておくと、作品に色をつけるときのヒントになるでしょう。

「自分色」で色をつけた作品には、自分の思いがこめられます。工夫して色をつくりだしたのですから、きっと愛着のもてる作品になるでしょう。人が見分けることができる色数は本当にたくさんあるのですから、自分の作品に色をつけるときも数え切れないくらいの色を使って欲しいと願っています。

これからどんどん「自分色」を増やしていきましょう。

…描く手を止めさせて伝えた話はこのような話でした。

そうして、子どもたちのつくった色で作品が彩られたのを発見しては、「いいね。自分色だね。」と声をかけていきます。実際、黒一色、青一色のようだった夜空が授業の中でそれぞれに少しずつ違う色で描かれてきたことで子どもの追求を一端を見ることができました。子どもの満足げな笑顔に、また一つ勇気を貰える授業ができたような気がしました。

今回は、白・黒・灰色を混ぜる点については省いています。水彩画においては、白をまぜることによる白濁が透明感を失い、他の色と合わないことがあったり、影色に黒を混ぜることを安易に教えたくないという思いからでした。補色使いによるミュートカラーやナチュラルハーモニーなど有彩色でできることは多々あります。

そうはいっても白黒を混ぜる場面は出てきます。たとえば、肌色と茶色。いわゆる肌色はオレンジに白、茶色はオレンジに黒としつつも、肌色や茶色は赤~黄の同系色と白、黒との混色でできる幅の広い色であることを示しましたが、これもあくまでも個別対応をします。質問があったときにパレットで本人に実際に混色させ、赤を足したり、黄を足したり、場合によっては黒ではなくあい色を足したりと試行錯誤をさせながら…。

少しでも愛着をもって描くことができればという思いからスタートした「自分色」という提案、いかがでしたでしょうか。