歌麿の紫から…
寄贈されるときの約束でボストン美術館に所蔵しながら展示されずに封印されていた歌麿の浮世絵。スポルディングコレクションといわれ、約6500点作品があるといいます。アメリカの大富豪スポルディングが明治に入って没落していった旧家の倉に眠っていた浮世絵を集め歩いたものだそうです。
そのうち400枚もの歌麿の浮世絵版画。そこに登場する「紫」は化学分析から、藍の成分であるインディゴと紅ではなく露草と紅によるものであることが昨年来の研究で判明しました。
露草は変褪色が激しく、なかなか現存する日本の歌麿の版画では確認できなかったといいます。
歌麿は助六の江戸紫を表したかったものと考えられます。暗い劇場で映えるようなやや明るい紫です。
歌麿が生きた時代は奢侈禁止令の吹き荒れる「寛政の改革」まっただ中。当時紫は奢侈を嫌った江戸幕府が禁止した色でしたが、庶民のあこがれの色としていつしか浸透していました。そうした庶民のあこがれを自分の作品で実現するべく禁令、禁制を破って歌麿は登場人物にその紫を作品に多用しました。紫を使うことで女性の色香漂う表現をして見せたといいます。女性美を作り出すために用いた紫。紫には独特の魅力があるようです。
しかし幕府はそんな歌麿を許すはずはありません。浮世絵を敵対視し、彼を危険な人物としてリストアップ、歌麿が描いた絵をもって時の将軍家斉を揶揄したかどで逮捕します。御法度といわれていた秀吉の絵を描いたことが逮捕の理由でした。入牢3日、手鎖を架けられ憔悴する歌麿。そして彼は50歳前半で生涯を閉じます。「紫屋」という呼び名で呼ばれた歌麿。その人生は露草のごとくはかないものだったようです。
源氏物語もテーマカラーは「紫」。艶やかではかない印象がだぶります。
紫といえば、「貝紫」が「帝王紫」として帝王の象徴としてあつかわれ、珍重されたために取り尽くされ15世紀には絶滅したとされています。その後極限られた地域で採取されていたものの政府から捕獲が禁止されほとんど採れなくなってしまったといいます。
いづれにせよ、はかない「紫」ということでしょうか…。
「紫」官位十二階でも最も身分が高いとされている色。今でも着物では,紫を着られる方はちょっと格がちがいますね。また,イメージカラーとしても,紫は高貴な印象を与える色とされておりますね。
盛岡では,南部紫紺染めといって,木の根っこから紫の染料を抽出した伝統工芸があります。かなり濃い紫であり,やはり珍重されております。
余談ですが,私はパープル色の多い服装や私物だそう。生徒に指摘され,私物チェックしたら腕時計にはじまり,鞄,試合の道具にしても随分紫が多いことに気づかされました。それ故,昨年の勤務校でのあだ名がパープル先生でした(-_-;)行動は高貴でも優雅でもないのに。。。
パープル先生ですか。う~ん、なかなかエレガントな。
そうです。位階の色としてはもっとも身分の高い色ですね。
紫がなかなか手に入らない色であったことも影響していたようです。
>うさみさん
江戸紫というと子どもの頃の海苔の佃煮のネーミングに強い印象があるのは私だけでしょうか。CMよくやっていましたよね。色彩を学ぶようになって、助六の江戸紫が強く印象付いていますが…。
>みに~さん
歌麿のしたたかさや執念。そしてそれを約束通りしっかり保管していた美術館も粋のわかる人々だったのでしょうか。高松塚古墳ではありませんが、今を生きる人々が守り抜く決意を持たないとそれこそはかなく変褪色してしまうかもしれない危うい存在ですよね。
気持ちといえば…紫って、色相や明度、彩度によって、色彩感情のバリエーションが他の色より多い気がするのですが、いかがでしょう?
しかも紫って、香りをとても感じさせる色なんですよね〜。
スペクトルにはないのに、花々には多い…。不思議な色です。
しかしmayusan、素敵な番組を見つけるのが上手ですね。
私はポケッ…としている間にいつも終わってしまって…あ〜あ(- -;)
紫。色相の幅を感じさせる「二藍」の存在も魅力的ですよね。紫は解釈もいろいろと出てきそうですよね。私はやはり赤紫よりの「京紫」も妖艶なイメージで惹かれます。