「色彩」を教える

現在使用している中学校1年生の美術の教科書には「色」が見開き3ページで載っています。

その内容は、色の分類と三属性、混色、配色効果(トーンと感情効果)、対比はもちろんですが、さらに日本の伝統色、デザインや絵画工芸と色など項目をあげるだけでもかなりたくさんあることがわかります。

これを通り一遍2時間かそこらで流すということはやろうと思ったらできるかもしれませんし、またそういった配当時間が年間の計画ではまかり通っています。

けれど、制作の中で「色」の占める意味はとても大きいのではないでしょうか。

多くの現場で生徒が「配色」や「色づくり」で悩んでいます。

作品をつくるとき、あるいは絵を描いていくとき、生徒は放っておくと大抵思いついた色をどんどん使っていきます。うまくいっていれば問題は無いのですが、そのうち混乱してきます。そして次の手が出なくて困った時点で指導者に相談するわけです。
「どうしたらいいですか」と。
中には全くお構いなしで、結局、自分の作品によさや魅力を感じないまま作業を進めてしまう生徒もいますし、何とかしようともがいて結論を出せずに止まってしまう生徒もいます。

「色彩」の基礎を教えるという観点が不足している指導者は、得てしてこのような生徒の配色に口を出します。双方に通じる共通言語を持たないので、ここは何色、ここはこれにしなさいと具体的な色指定をしてしまうケースは後を絶ちません。その色を使う理由は「その方がいいから…」だったりします。こんなことをしていると自分の作品なのに指導者に初めから決めてもらおうとする生徒が出てきてしまいます。

どんな色で塗ったらいいのかわからない。私にはセンスがない。だから美術は嫌い。
鉛筆で描いているときはよかったのに、色を塗ったらぐちゃぐちゃになって、絵の具は大嫌い。

こうした思いを持つ生徒はかなりたくさんいるのではないかと思います。

だから、「色」は丁寧に教えたいのです。

なんとなく感じることができる色の見え方にルールや解釈を与えることで安心させる必要があります。また、この色はどうやってできているんだろうという疑問に道筋を与え、応用力をつけさせなければなりません。

茶は黄から赤の仲間。黒が混ざっている。肌色は同じ黄から赤の仲間だけれど白が混ざっている。
制作の中でこの「茶色」や「肌色」の色づくりに悩む生徒が多いのです。

色相環の色を覚えよう。向かい合う色同士は並べるとギラギラするが、相手に少し混ぜるとちょっと落ち着かせることができる。
自然の緑を絵の具チューブの緑で表す子どもはたくさんいます。

似たもの同士は合う。順に並べてやるとリズムが生まれるし快い。けれどちょっとおとなしい。違ったものは互いに主張し合い、混乱する。どこかに共通性を持たせてみよう。
配色に失敗したくない気持ち。これは誰にもあるものです。このような場面で配色調和の原理を知っていれば…。



たとえば、上のようなことを共通言語で通じるようにしておくのです。共通言語をもってはじめてコミュニケーションが成立するのですから。

暖色に黒を混ぜると「茶色」が、白を混ぜるといわゆる「肌色」やベージュが得られる。
補色は並べると強い配色効果があるが、混ぜると彩度が下がる。
類似色相・類似トーンは統一感があり、グラデーションにより快い効果が得られる。対照色相・対照トーンは強い配色効果があるがそれぞれにトーン、色相に共通要素を入れると統一感も得られる。「変化と統一」が重要である。



これらの用語はとても1時間や2時間では押さえられません。

そこで、三原色カラーやカラー粘土で混色を経験させたり、作品をそれらで制作させながら繰り返し学習をして、自分の感覚と、用語やその意味とが一体化するように授業を組み立てていく必要があるのです。

「急がば回れ」

まさにその言葉がピッタリです。

かく言う私も小6の卒業制作で助言したのは、ペールトーンの色画用紙とビビッドトーンの色画用紙を数枚ずつ提示して、同一トーンを使うとまとまるという配色ルールを子どもたちに確かめさせただけだったような…。
そして見るに見かねて、色指定をしてしまった子どもも結構いました。もちろんその色を使う理由として「共通の色、似ている性質の色を使うことでまとまりが出る」とか「メインと背景の色の差がないと○○ちゃんがせっかく表そうとしている△△がぼやけるから」とか「突然この色が出てきたら周りとあまりにも違ってしまって飛び抜けてしまうし、合わないから」などとつけ加えました。「その方がいいから」なんて子どもの将来に何のプラスにもならない理由はいいません。

やはり色の基礎・基本を系統的に教えることで、指導者が生徒の作品の配色を指定しなくて済む授業を少しでも増やしていきたいものです。