氷結さんの質問に。答えになるかどうか…?
そのときは質問の意図が飲み込めず、「宿題にさせて」と言って別れました。
今日、新テキストを読む時間がとれたので、お答えになるかどうかはわかりませんが
コメントしたいと思います。
その質問は、
「新テキスト2級に出てくるマンセルの面積比とムーン&スペンサーの面積比をどう考えたらいいか」
ということだったと記憶しています。
新テキスト2級の記述は、まず項目として、「美的構成」という章の「プロポーション」の項にありました。
いわゆる美術で扱うところの「構成美の要素」つまり、美しいと感じさせるさまざまな要素のうち、
「プロポーション(比例)=程よい美しさを感じさせる各要素の比率、割合」について述べているところで、
色彩でいうと配色における各色の面積比ということになるだろうという論旨の説明でした。
その中でイッテン、マンセル、ムーン&スペンサーはその比をどのように捉えているかを紹介している部分、
それが今回の質問の内容ですよね。
彼らは共通して色彩調和を数学的に秩序立てて論じようとしました。
まず、イッテンは色相環における各色(つまり高いchromaです)において程よい比例を得る面積比を
黄:橙:赤:紫:青:緑=8:9:12:24:18:12としました(→2級テキストP98図12)が、
これを反対色の面積比になおすと
赤:緑=1:1、橙:青=1:2、黄:紫=1:3となります。
イッテンはゲーテの色相環の色の明度(value)を元にし、それぞれの明度の逆数を面積比とし、
そうすることで調和が取れるのではないかと彼の得意な整数比で簡便に割り出したわけです。
つまり、2色配色のとき
低明度色ほど面積を大きく高明度色ほど面積を小さくするとバランスが取れるとしているのですね。
次にマンセルはイッテンが色相環を構成する色を対象にしたのに対して、
(さすが三属性を体系化した色彩教育家です)
色の面積バランスには明度(value)とともに彩度(chroma)も関係しているとして、
2色は、明度値と彩度値と面積比を掛け合わせた値が等しいときバランスが取れると
やはり数学的に色彩調和をとらえたわけです。
この理論でいくと高明度、高彩度色ほど面積を小さくし、
低明度、低彩度ほど面積を大きくすると調和するということになる。
これはアクセントの考え方を説明するのに好都合な理論ですね。
マンセルはバランスドカラーという考え方をとっていました。
使用色の面積比をもとに回転混色をしたときN5(明度5)となる配色を調和しているとしていたのです。
これについては、北畠先生の「色彩学貴重書図説」p71に図があります。
さらにこれらの考えを数式を用いて理論付けようとしたのが、美度計算で有名なムーン&スペンサーです。
彼らはマンセル同様、配色に使用した色のvalueとchromaの値から計算された数値を根拠としました。
すなわちN5からその色までの色空間内での距離「モーメント・アーム」を設定し
(必ずN5を通ってマンセル色立体空間を動き回る一定の長さのものさしと考えてみましょう)の値と
その「面積」を掛け合わせた値「スカラー・モーメント」が等しければほぼバランスが取れるとしました。
天秤におもりをつるし、つりあいを保つのに左右の距離×重みを等しくしてやるのと同じ考え方ですよね。
N5から離れた位置にある先端の色=高明度・低彩度色(薄い色)、中明度・高彩度色(強い色)、
低明度・高彩度色(濃い色)は、そのものさしの反対の端の位置にある色=中明度・中彩度色、
高(低)明度・中彩度色、中明度・中彩度色と比べて面積を小さくする必要があるということができます。
(文章で伝わるかなぁ)
マンセルとの違いとして、ムーン&スペンサーは明度value値に重きをおいている(chromaの8倍)点と
配色意図によって、強調したい色があれば一方の面積比を標準の2倍、3倍といった単純な整数倍もOK
とした点です。
意図して面積バランスを変えた場合についてムーン&スペンサーは、
配色効果は使用色の面積比に従って回転混色した時のイメージになる(=バランスポイント)としています。
マンセルがアンバランスドカラーとした配色であっても意図してバランスを変えた配色として受け入れている
といえるのではないでしょうか。
このようにイッテン、マンセル、ムーン&スペンサーは面積比(数字)により標準的なバランスを捉えています。
テキストではさらに、
これらの理論の結論は一様ではないが、総じて高彩度色や高明度色は小さい面積に用いるとよいが、
意図的に特定の色のイメージを強調したいときはそうとばかりは言えず、
そのときは面積比の大きい色のイメージが、配色全体のイメージに影響するとして
ムーン&スペンサーの理論をまた持ち出して説明を加えています。
ムーン&スペンサーのこれらの理論は、第二論文「色彩調和における面積」で発表されたものです。
前出の「色彩学貴重書図説」によればムーン&スペンサーよりも1C前にフィールドはメトロクロームという
実験器具を用いて赤5:黄3:青8の面積比であれば調和すると説いています。
混色して無彩色になる赤・黄・青の比で配色すれば調和すると考えたのです。
フィールドやマンセルの提唱していた色彩調和のための配色のバランスに関する面積効果を
さらに精密に計量化するために論じたものがムーン&スペンサーの理論であると、
福田先生の著書「色彩調和論」に記されていました。
例のごとく福田先生からは紹介程度であって、しかも「提案の斬新さは認められるが実用的には
もっとも無意味な論文」と評価を下していますが…。
というわけで、2級テキストでの「面積比」については配色の適切な面積比を求める理論として
イッテンはゲーテの色相環(明度の逆数)を用いた明快な整数比を、
マンセルは三属性をもとにマンセルシステムにおけるvalue値・chroma値×面積比を、
ムーン&スペンサーはマンセルシステム上での「スカラーモーメント」と
回転混色による「バランスポイント」を
それぞれ理解できればほぼOKということがいえるのではないでしょうか。
…って、さてこれで説明になっているのでしょうか。
ムーン&スペンサーは、「モーメント・アーム」の値とその色の面積を掛け合わせた値を「スカラー・モーメント」と言い、その値が等しければバランスがよい、とする、と言っているわけですよね。
でも、モーメント・アームの値はN5からその色までの距離なので、valueの値が8倍ってのが???????です…
そうか~~、1/8か~~~、分かりました!!そうか、1/8にしたところで距離だから変わらないんだ~~~、極端な話、1/20にしても距離的には同じってことですね!
あ~~、なんかスッキリしました!ありがとございます(^^)