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日本教育美術連盟の夏期研究会が大阪天満橋「エルおおさか」で18・19日の2日間開催されました。中学校と校区の小学校に兼務する美術教師としては、両校種の図工・美術に関わっておられる先生方と交流できるまたとないチャンスです。両日とも楽しく、有意義に研修することができました。特に注目したものを書き留めておきたいと思います。

一日目の研究発表で、京都市の小学校の実践『すきな色見~つけた』を大変興味深く聞かせていただきました。これは小学校2年生の取り組みです。

校区に出かけて自分の町のきれいな色・好きな色の「組み合わせ」を見つけてきます。そしてそれがなぜ好きなのか、どうしてきれいと感じるのかをグループで話し合い、発表し合って深めます。最後に色画用紙の紙片を選んで白い台紙に効果的に貼り付けて色面構成し、教室に貼り出すといった活動です。総合の時間と図工の時間を使って取り組んでおられました。

まずはクラスのみんなでお出かけ。1年生のときに生活科の中で町探検で出かけて以来です。今回は商店の看板やポスター、コンビニやお医者さん、喫茶店のふとした出入り口のサインを「色の組み合わせ」という共通の切り口で見つけていきます。なんだか考えただけでもワクワクする活動です。当然、その気になって探せば、多種多様な色との遭遇が待ち構えていそうですよね。

この取り組みでは、子どもたちに「気にいったところは先生に言ってね。」と先生はもっぱらカメラマンに徹しています。事前に「ここは気に入るのでは?」と指導者がもくろんだ事例があっても、子どもたちにはあれこれと言わない。子どもたち自身の発見(=主体性)を大切にし、指導者の意図で誘導しないという点に感心しました。

後日教室で、持ち帰った写真データをプリントアウトしたものをワークシートに貼り、自分の気に入ったところを発問にしたがって記入します。それらを元に、違うものを選んだ者同士、同じものを選んだ者同士それぞれにグループで話し合い、みんなの意見を聞いて感じたことをまた記入して、という活動を通して鑑賞を深めます。

「色が2~4種類ぐらい組み合わされている」「はっきりした色」「似ている色」「ちょっとずつ変わっている」など、指導者とのやりとりで次第に「よさの感じ」が整理されていきます。子どもたちが好む色に、あらかじめ「配色」の視点を与えている点も素晴らしいのですが、そこにすでに「対照」「類似」「グラデーション」「トーン」の感覚が見て取れるというのが素敵です。また、ピンクや水色に「やさしい色」を感じ取った子には「○○ちゃんがやさしいからそう感じたんやね」と情緒的にとらえる子たちもいたとか。低学年の特徴をよく表しているように思います。

こうして鑑賞して終わらせずに、自分なりに表現活動を通してさらに確認していくというのがこの実践のすごいところです。色画用紙の紙片(テープ状、大・中・小の四角、三角、丸など)という制限を加える中で、自分なりに見つけたよい配色を再現していきます。(色画用紙をそのまま渡した別クラスの実践では具体物へと展開してしまい「色」のテーマがぶれてしまったそうです)事例の中には、友達が見つけた「同じ色をセットにして使っている」という気づきに共感して、違う形ながら同じ色を3組ほど組み合わせて表現することを思い立ったという作品例がありました。テープ状の色面が交差し、小さな2つの円が整然と平行に並べてあり、その子の表現意図がはっきりと感じられる作品でした。

これらの作品は教室の掲示板に、先生が授業のねらいをまとめた「すきな色み~つけた」の掲示物と一緒に貼り出され、保護者にも見てもらっているそうです。地域の写真とそこから抽出された色づかい。そこにもコミュニケーションの糸口もありますし、子どもの作品がうまい・へたの評価にさらされることも少ないでしょう。なによりも個々の子どもの姿が作品への取り組みから見て取れるので、「こんな発見をしていましたよ」など指導者の見取りを保護者に伝えやすい実践であることにも言及しておきます。

「いろんな色の組み合わせがあるんだな。」「きれいだな。」「楽しいな。」…低学年のうちからこんな視点で自覚的に積極的に周囲のものを見つめていくことができたら素敵ですね。
1年生と2年生の前期期末テストを実施しました。
木・金が小学校勤務になりますので、今日からテストなのに
初日に終了!です。

というわけでこれから採点です。

1年ははじめての美術のテストでしたが、既習範囲をまんべんなく出題しました。

実技試験については、これは何点というような採点がそぐわないので「発想・構想の能力」、「創造的な技能」という観点に合わせ、abcでつけることにしています。

鑑賞は、教科書のニルス・ウドの「無題」と以前こちらで紹介したホーマーの「カントリースクール」から出題しました。


ところで、ニルス・ウドの作品はなかなか奥が深い。
これはよく見ると大変不思議な作品です。


作品は写真なのですが、サクラの葉とヤナギの若木で構成されています。
下の方には春から夏にかけて見られる青々とした青葉。そしてだんだん秋になり黄色く色づいた葉。そして虫食ってところどころ穴の空いた茶色い落ち葉と続いていきます。
緑~黄~赤、自然のなせる色相のグラデーションです。

…って、何気なく見ていると「ふーん」と見過ごしてしまいそうです。

しかし、これは写真です。

つまり、同じ時間・空間において四季の移ろいを表現しているのです。
ニルス・ウドが仕掛けたトリック…。1年生の最初に鑑賞作品として取り入れました。

「彼はどうやってこの作品をつくったでしょうか?」

投げかけた発問はこの一つだけです。

はじめは質問の意図がわからないという表情の生徒たち。
生徒の表情の変化は授業をしていて本当におもしろいものです。

以前、紅葉した落ち葉を色鉛筆でスケッチさせようとして出勤途中に拾い集めたことがありましたが、半日でどんどん色あせていきました。とても保存の利く物ではありませんでした。
そのことを子どもたちにも話しました。

日々の経験が浅い子どもたちです。採ってきた葉っぱはそのまま何ヶ月も保存可能だと思っています。

私の経験を話すと思考停止する生徒も出てきました。

本当にこの作品はどうやってつくったのでしょうね。
(一応腹案はありますが今ここで公開するのは止めておきます。)


さて、授業での発言ももちろん大切ですが、まとめとして知識や感じ方考え方を問うのも重要だと思います。作文力によらず、論旨で採点しようと思っています。

テストでは、図版を載せて、「あなたならどんな工夫や方法でこの作品をつくりますか。」と出題しました。いずれ、採点が進めば生徒たちの名案を紹介してみようと思います。

皆さんも一度じっくり考えてみるのも楽しいのではないでしょうか。
by my-colorM | 2006-10-18 20:46 | 日記
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「カントリースクール」(1871年ウィンスロー・ホーマー作)

北海道の美術教師で以前そのブログを紹介させていただいた山崎先生と本ブログにもちょくちょくコメントを寄せてくださる大学時代の同級生の土屋先生とのネット上の共同研究となった鑑賞授業。この作品について子どもたちとの授業でのやりとりを大雑把ではありますが紹介しようと思います。

「カントリースクール」 More
ようやく明日実施のテストができました。

今回は鑑賞中心でルネサンスの線遠近法の発達と絵画技法の変遷を主に。
実技問題は一点透視図法を取り入れての出題です。

それにしてもルネサンスと印象派の絵画の明るさの違いと言ったら。
生徒にも一瞥で理解できるほどの違いがありますよね。


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今回の授業ではどうしてこのような違いが生じるのかを
技法の進化で解き明かしました。

(もちろん色彩学の発達が印象派にもたらした影響は大きいのですが…。)

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by my-colorM | 2006-02-23 23:31 | アート