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教員免許更新講習の一日目に、全部改正された教育基本法の特徴を解説する講義がありました。その講義の中で、講師から、「日本の伝統文化を継承すること」が、私たちの教科、美術との深く関係がある箇所だと言われました。

ならば、日本の伝統文化とは何か。その、当然説明の出来そうな問いが、案外あやふやなものであることも、今回の更新講習の四方山話として提供されていました。日本の文化、芸術を突き詰めていったとき、古来から引き継がれてきた日本固有の文化というものはなかなか見つからないのだと。

日本の文化は、文字はもとより、宗教、建築、芸能、美術、その他もろもろ、多くが中国大陸や朝鮮半島を通って(主として渡来人を介して)、伝播してきたものであるのは明白です。中には平安時代や鎖国政策がなされた時代に独自の発展を遂げたものもありました。

しかし、明治維新に伴う文明開化以降、欧米化・近代化が急激に進むと、中国大陸、朝鮮半島はもとより、オランダやポルトガルといった西洋をも含む異国から伝播し、醸成・発展して花開いた江戸の文化は、古く遅れたものとして、先進的な物や技術・思想に駆逐され、多くが廃れていきました。もちろん、欧米化のもと、工芸品を中心とした日本の優れた文物が、ヨーロッパに紹介されて注目を浴び、独自に、急速に発展した分野もあるにはありますが。

また、明治政府の神道国教化政策のもと、廃仏毀釈が進められ、破壊・遺棄された仏教美術も多く、文化的な損失は計り知れないといいます。さらに度重なる戦争の混乱下、焼失、散逸を余儀なくされたものも少なくないことでしょう。

さて、U氏により再現された土佐光起の色見本のことを、前回取り上げました。氏も、伝統という言葉に意見がお有りのようで、日本の伝統美術とは何か、日本画とは何かについて、様々な切り口で語られました。

まだまだ不勉強な私の頭の中で、氏のお話は実際、消化しきれていません。もやもやしたままでは何だか気持ちが悪い。そこで少し頭を切り替えるつもりで、「日本画とは」で検索を試みました。そこで見つけた山種美術館のHPが秀逸!日本画に関する、アカデミックな解釈として、これに勝る解説は他に見つかりません。とてもわかりやすい解説でしたのでURLを紹介させていただきます。まずは一読を。



山種美術館「日本画とは」

さて、U氏のお話にもどします。氏は、このような日本画のアカデミックな解釈に対して異論を展開されたのです。特に、油絵を主とした洋画と、これまで○○派として伝統的に続いてきたいく筋かの流派との間を分類する材料に、「画材の違い」を取り上げている点に違和感を持たれているようでした。

氏は、今も昔も、日本画だけが、岩絵の具や泥絵の具を膠で基底材に接着するものではないはずだと力説します。「何故なら、大昔は、…」と言って、一つの石をどこからか運んできて、ご自分の手元にコツンと置かれました。

「人と獣の決定的な違いが、この石をどう使ったかにあると私は考えているんですね。」
と。


何が展開して行くんだろう。氏との楽しい日本画談義はまだ始まったばかりです。

つづきは、また次回に。


by my-colorm | 2014-08-20 22:48 | 色の話
U氏は、私に膠のサンプルを見せる前だったか、水簸(すいひ)について語ってくださった。私が水干絵の具を使うと言ったけれど、どうやらそれとは違うものを指しているらしい。

水簸を辞書アプリで調べると「固体粒子によって水中での沈降速度に差があることを利用して、粒子の大きさ別に分ける方法。陶土の調整や、砂金の採取などに用いる。」とある。具体的な方法は思いもよらないが、お土産にいただいた色粉を見、資料を読み解くと、どうやら、鉱物などの顔料を砕いたものに水と膠を加えて、(多分)乳鉢で擂り、上澄み液を濾し、乾燥させる方法で、粒の大きさの違う顔料を選り分け、取り出すことを云うのだと取れた。顔料は、粒子が細かくなるほど白っぽくなる。つまり、明度が増し、彩度が下がる。乾燥後、ふるいに掛ければ、細かい粒子の明るめの顔料が得られ、残った方はそれよりも鮮やかなものとなるという理屈だ。

続いて氏が見せてくれたのは、土佐光起が残した、土佐派の絵画指南書の中にある色づくりのレシピに基づいて作られた、ベニヤ板半分くらいの大きさの「色見本」標本である。これも今思えばくらいのことで申し訳ない。先の資料を後でじっくり読ませていただいて、より実感が湧いてきた。おそらく光起が書いて残したままの順番で、見本は並んでいるのだろう。

お土産にいただいた資料は、土佐派の絵師達が用いた色そのものと、絵の中で、どの部分に用いるのか指示されている。勿論、目標色は光起の絵画中に求めたのだろう。文書を読み解き、試行錯誤をしながら忠実に色見本を作成されたに違いない。歴史的に古い作品の経年劣化、褪色をも考慮しただろうから、その点を想像するにつけ、今更ながら、氏の研究熱心さを十二分に伝える仕事だと感じる。



U氏の問いは、「日本画とは何か」に集約されると私は思った。



次の回は、そのことを、私なりの解釈をさせていただきながら、お伝えしたいと思います。



by my-colorm | 2014-08-20 17:33 | 色の話
この夏、二度目の東京でお会いしたU氏について、恩師K先生から大学時代に同じ彫刻科の同期だとお聞きしました。東京帰りで帰省した際に訪ね、近況報告をした時です。Uさんは気さくで、研究熱心な人だよと、教えていただきましたが、まさにその通りの人物でした。K先生の教え子だと聞けば、さらに面白い展開があったかもしれません。

さて、友人Kさんの紹介で、始めて訪ねていった見ず知らずの私に、時間を忘れるほど、いろいろと話してくださったU氏。その貴重なお話は、忘れないうちに書き留めなければいけません。

とはいえ、三時間半に及ぶ、ほとんど間断のないお話(失礼にあたるかと、メモをとることなく…)の、どこから書きましょうか。

まずは、訪ねるきっかけとなったことに関わる内容からいきましょう。

ウエマツ画材店は渋谷にあります。Kさんが紹介してくださったのは、日本画を生業にしているKさんに投げかけた、ふとした相談からでした。

中学3年生の授業で、日本画入門と称して、水干絵の具で描かせているが、それを溶く膠液が冬場には固まってしまい、制作に支障が出る。何かいい方法はないかしらというもの。すると、即座に「ならウエマツにいいのがあるよ。冬でも固まらないやつが」の返答。ご自分もよく使う材料だから、「興味があるなら行ってみる?」と言われ、頷きました。

その後、私の知らないところで社長のU氏にアポ取りを済ませ、「社長さん月曜日は2時から研究室に出勤するって。京都の○○さんていう中学の美術の先生が行くって伝えといたから。何なら夕方でもいいって…。」という。なるほど、行って聞くのが早いってことね。これは何が何でも行かなくては!…てな流れで渋谷を訪れたのです。

Kさんから言われた通りに店員さんに伝えると、宮益坂通のとある年代物のビルの十階に案内されました。そこに、社長室兼研究室がありました。

余りキョロキョロ見回すことも出来ず、簡単な自己紹介をすると、勧められるままに、部屋の中央にある作業用の大きなテーブルに向かい腰掛けます。U氏は色とりどりの瓶や容器が並ぶ、その向こうにもちょっとしたスペースがある重量棚を背に、テーブルの対岸に座られました。

「実は」と、早速、件の膠液の話を切り出しました。まずは私から、前提として、私が取り組んできている題材すなわち、卒業制作として、色紙(しきし)に墨彩画を描かせることとその意味、添え文のこと、一緒につくる篆刻のこと、制作の段取り、展示方法、準備物…などを一通り説明、日本画入門と称して、水墨画での練習をした上で、手本をもとにしつつ、アレンジも許して取り組んでいることなどについては特に詳しく話しました。

また、生徒がそれまでの経験の中で、この題材のように指で絵の具を溶くということはなく、多くの生徒にとっては、おそらく最初で最後の経験になるかも知れないので、今後も是非取り組んでいきたいのだという思いもお伝えしました。

そして、そんな大切な経験なのに、膠液が固まってしまい、絵の具作りがままならない状態を何とかしたい。画家は手元で湯煎しながら描くだろうけど、集団で、美術室という限られたスペースではどうにもならない。たまたま前々任者が残した水干絵の具がたくさんあるので、是非使いたい。これまでは7年前の膠液が残っていて、それがたまたま古くて変質し、サラサラだったために、昨年までは困らなかったが、新しく購入した膠液は、冬場の常温で容器の中で固まってしまい、容器ごと湯に浸けて溶かすことが出来ても、皿に小分けすると、途端に固まってしまい、絵の具を溶くどころではない状況で大変困っていること。等、諸々を説明しました。

U氏は、時折、質問を挟みつつ、私の話をうなづきながら、じっくり聞いてくださいました。ひと段落ついたところで立ち上がると、テーブルにいくつかの膠棒とシャーレに溶かして固まったサンプル、そして膠液の容器と透明なグルー、またその固まったサンプルのシャーレを次々に取ってきては私の近くに置きました。あぁ、これが膠ね。ほう、乾燥して固まるとこうなるのねと、それらを眺めている私。

そこへ、不意に質問。「膠を使うのは何故か?」
「はい。そのままでは粉状の絵の具が紙に定着しませんから、糊のようなものでしょうね。」
「その通り。膠はメディウム、つまり、接着剤ですね。」

続いて、グルーの話になりました。これが、氏が長年かけて開発して来られた、Kさんが言ってた例の画材なのでしょうか。

悪い癖ですね。ついつい長くなってしまいました。では、続きはまた。






by my-colorm | 2014-08-19 10:15 | 色の話
昨晩東京入りして、本日、日本色彩研究所が開いた「色彩識別技能者2級認定講習会」を受講しました。マンセルカラーシステムのHVC、つまり色相(Hue)・明度(Value)・彩度(Chroma)の小さな色差を識別する能力を身につけ、認定を受けるという講習会です。

2年前、同研究所主催の「色彩指導者養成講座」でもHVC識別テストが実技試験にありました。ほぼ同じ手法、内容でしたが、改めて技能訓練の進め方なども参考になりました。日頃テスターが身近にありませんのでそう簡単に訓練することはできません。その意味でたまに確認のために受けておくというのもいいかもしれませんね。いったん身につけた技能は割と保持できるようです。私の場合もHVC識別テスターによる3回のテストで、1回目こそ30枚中3枚見分け違いがありましたが、2回目3回目ともパーフェクト解答でした。また、集中講座では苦戦した(いわゆる)肌色の微妙な色の違いで並べる試みも今回は割と明確に識別できました。HVCテスターで、交互に解答したお相手さんは3回とも特に明度・彩度に誤答が目立ちましたが、その後何度も確認されて(訓練を積んで)、結果最後に行われた試験では参加者の誰よりも早い時点で合格されていました。技能保持のための出費としては往復の交通費も受講料もお高めではありますが、今回は2級でしたが、1級を取得すると2級認定講習会の指導者の資格が得られるそうです。また、マンセル標準色票集を用いて試料のマンセル値を目視によって同定する技能訓練も個人ではなかなかできませんから、いい経験になったと思います。

さて、今回、会場となった西麻布の霞研修センターは、全館改装されて見違えるほどきれいになっていました。集中講座のときに何回か通ったイタリアンレストランが閉店していたのも時の流れ。もうあれから2年も経つのかとしみじみと思いました。そういえばあのときは、代田橋の息子のワンルームから通ったのだっけ。初日、新宿経由で大江戸線を逆方向に乗ってしまい、30分以上遅刻。7月の下旬でした。六本木駅から地上に出ていろんな汗を吹き出しながらタクシーで乗りつけたのを思い出します。その後、渋谷からバス便で通う方が早いと知りましたけど…。それでも、六本木駅から慌ててタクシーに乗るほどの距離ではないことも知っています。今日は、秋葉原からですので日比谷線一本で向かいました。集中講座では丸一日みっちりあって、また次の日もありますので、なかなかその後遊ぶなんて余裕がなかったのですが、今回は4時半過ぎにテストが終了、試験にパスした者から流れ解散でしたので、終わってから久しぶりに森美術館に出向くことにしました。

2007年に観た六本木クロッシング。今回は3回目となり、「芸術は可能か?」をテーマに現代アートがその可能性を追求するという趣旨で展開されていました。2007年には、とにかくその技のすごさもさることながら、ユーモアが前面に出て「面白い」が際立ち、現代アートの熱気とパワーに圧倒された展覧会だったのですが、今回は重たい感じの行動アートが少なくなかったような気がします。それでも圧倒されるような量感で迫ってくる作品に度肝をぬかれる場面もしばしば。見応えは十分にありました。

併せて森アーツギャラリーの「ボストン美術館展」も観てきました。質・量ともに優れた同美術館のコレクションのごく一部をざっと観せたという感じ。有名どころが多数展示され、さすがでした。このところ東京で観てきたピカソ、モネ、コロー、ルノワールに、ゴッホ、ミレー、レンブラント、ベラスケス、グレコ…と、西洋画の歴史を概観する贅沢な展覧会構成になっています。逆に、正直言ってお腹いっぱいな感覚も否めず、私は割とサラッと観て歩いてしまったかもしれません。図録も様々な名画を数パターン表紙に選び、幅広いファン層にそれぞれお気に入りをチョイスしてもらおうという趣向。要は鑑賞者の好みで評価が異なる展覧会であるといえるかもしれませんね。


5月に修学旅行で再び東京を訪れるのですが、明日、明後日は生徒が行う班別研修のチェックポイントを中心に自主的に下見をしておこうと思います。晴れたらいいのですが…。それにしても今日は昨日に続いて寒すぎ!でした。
by my-colorm | 2010-04-23 23:34 | 色の話

NCC

先日、AFTの講師研究会(認定更新発表会)に出掛けました。
懐かしい、色彩講師養成講座同期の方々の更新発表を見させていただきました。やはり、さすが認定一発合格の実力者ぞろいだなぁ…と感じ入ったものです。

中でも体験型の発表をされた、きよりんさんの「NCC」は、以前チラッとお聞きしていたのもありましたが、やはり大変興味深いアイテムでした。

「NCC」とは「ノエビア・カラー・コミュニケーション」の略です。きよりんさんがお勤めの化粧品会社で進めている、ロバート・ドアが創始と言われるパーソナルカラー理論を、企業活動として活用したカラーバリエ展開ツール、と紹介すれば少しおわかりいただけるでしょうか。

色の世界では、パーソナルカラーはもう常識かと思いますが、その人に合った顔映りのいい色をファッションやお化粧に取り入れる手法と考えたらいいでしょう。一般に知られているのはフォーシーズン(春・夏・秋・冬タイプ)に分ける方法。中には6タイプに分ける理論というのもあるそうですが、「NCC」はその点とてもシンプルで分かりやすいものです。ナチュラルを基本に、ブルー系のクールドミナントとイエロー系のウォームドミナントを設定し、3つのタイプ分けがされています。3タイプそれぞれに10枚、5段階のグラデーションカードで構成されているNCCシステムに従えば、洋服やメイクのカラー選びも失敗なし!ラクラクOK!というわけです。

きよりんさんはそのカードと、「クール、「ナチュラル」、「ウォーム」にあたるグラデーションスカーフを準備されていて、そのときに着ている洋服にマッチしたスカーフを間違いなく選ぶことができるというNCC活用体験をさせてくださいました。

相変わらずの、魅力的で親しみのある、落ち着いた話しぶりで、安心して聞かせていただきましたが、お話だけでなく、北畠先生監修のNCCの構成がとてもしっかりしていて説得力がありました。

今回は、その人そのものの肌映りはともかく、「身につけている色と合わせる」というのが分かりやすく、どの方もグラデーションカードでだいたいタイプが決められたようです。そして3タイプにグループ分けされたスカーフから好きなカラーを選定するだけで簡単に色あわせができ、どの方もお似合いの組み合わせを実現されていました。

私の場合、パーソナルカラータイプはクールアンダートーンでサマーなのですが、それを知ってから洋服選びは色を基準に割と迷わずに決めることができるようになりました。発表会当日も少しくすんだピンクのアンサンブルでしたが、ぴったりのグラデーションカードはクールドミナントからすぐに見つかりました。グラデーションスカーフはクールのグループから紺のスカーフを選びましたが、全く違和感はありませんでした。

また、スカーフは「ローズ巻き」(まずはスカーフを対角線にバイアスに折りたたんでいき、5~6cm幅のタイ状にして首に巻きます。そして、一つ結びで固めに締めたら、二本のタイを根元からクルクルと巻きとっていきます。先っちょは後から葉っぱとして残す部分。そこまで巻いたら、葉っぱの根元をきっちりつまんだまま、巻いた部分を環っかに、そう、カタツムリのような形でしょうか。そうして葉っぱの根元部分をポチッと輪っかに通し、キュッと締めると、あ~ら、ホント。薔薇一輪の完成です!!…って、なかなか文章では説明しにくいですね。)を教えていただきました。意外に簡単にネックにワンポイント、華やかさが付け加わります。

さて、実際のカラータイプについてですが、これはすっぴんの肌色を肌色スケールにあてて判定していくそうで、その肌色スケールも興味深いものでした。説明によるとNCCをもとに、メイクアップ商品にクール、ナチュラル、ウォームのカラーバリエを設け、判定されたタイプに合わせ、商品選択がスムーズにできるように展開しているとのことです。消費者としては失敗なく色選びができる点で優れたシステムだといえるでしょう。それをさらにファッションに展開できるとすれば利点は大きいところです。

早速、HPを訪ね、グラデーションカードとグラデーションスカーフをチェックしました。きよりんさんが持ってこられた3タイプが並んだカードのセットは非売品のようで、とりあえずクールドミナントのカードを購入することにしました。スカーフは3色セットでしたが、残念ながらタイプ別にはなっていませんでした。仕方ないのでとりあえず青系のセットを選びました。偏った購入を避けさせる企業戦略なのかしらん、まだカラータイプでセットするというコンセプトが全体として確立していないのかなぁなどと思ってしまいました。購入する側からすれば、タイプ別に3枚セットになっていた方が絶対お買い得ですもの。とりあえずタイプの違うスカーフは合う服がないでしょうから使わずじまいになることでしょう。これはもったいない。こればかりはどうにかならないものなのでしょうか。

そして本日、注文した品が到着しました。たまたま期間中でミニサンプルやミニブランケットもついてきました。こういうプレゼントがまた、「プチ喜び」だったりして。

それにしても、タイプ別のカラーバリエ、助かります。色目で選択できるパレット…、う~ん、購買欲をそそられます。
by my-colorM | 2008-10-19 01:34 | 色の話
夏の集中講座に参加させていただきました、日本色彩研究所の色彩指導者養成講座の、第27期隔月開催型の申込み締め切りが明日9月25日に迫っています。

集中講座は、私のように勤務地が離れていて受講できる条件が限られている場合、本当に助かったのですが、比較的近い方なら、じっくり学べる隔月型というのが、しっかり学ぶ上で、うってつけなのではないでしょうか。隔月の平日(木、金)に参加できる方はお急ぎくださいね。

内容は、広範な色彩学を様々なアプローチで学ぶことのできる、本当に楽しい講座です。

この機会に色彩学の上級講座を受講してみようという方は是非。おすすめです。
by my-colorM | 2008-09-24 22:45 | 色の話
色彩感情という言葉は聞き慣れないかもしれません。

例えば、ある色から受ける感じとして、
「暖かい-冷たい」や「硬い-柔らかい」、「重い-軽い」といった印象評価を行った場合、その度合いが各人によって判断され、色と感情とがどのような関係にあるかを調べることができます。その調査対象を広げ、たくさんの人に行えば、ある色の与える感情的傾向が統計的に見いだされるだろうと思われます。こういった、色の持つ、というか色が与える感じを色彩感情と呼ぶことにしましょう。

そして、その色彩感情にはことばの因子分析とくっついて、三つの基本次元があると考えられています。
色の感情的評価の手法としてSD法という調査方法があります。SD法とは、かつてことばの感情的意味について三つの因子を抽出したオスグッドの手法ですが、それにより、ことばの感情的意味の因子はそれぞれ評価性、潜在性、活動性と命名されました。この三因子はヴントがかつて感情の基本次元とした快-不快、緊張-弛緩、興奮-沈静の三次元とかなり似ているので、ことばについても3因子を軸にした感情的意味空間というのが設定されました。色彩感情を捉えるために、色の感情的意味について調べると、ことばと同様、三つの因子が抽出されやすく、同じように感情的意味空間に色をプロットすることができるというわけです。

ところで、こうした色の感情=色彩感情では、その基本次元として、強い・硬い・重いといった潜在性、暖かい・動的なといった活動性がかなり安定的に出てくるといいます。どういうことかというと、これらの感情と色との関係を訊ねた場合の応答に、個人差、地域差があまり見られないということを示しています。

このことは「アフォーダンス」から説明すると納得がいくと聞き(色彩指導者養成講座で)、はじめて「アフォーダンス」ということばを知りました。

そこで、たまたま本屋さんで『アフォーダンス入門』(佐々木正人著 講談社学術文庫)を見つけたので、読んでみました。

アフォーダンスとは、生態心理学のまったく新しい考え方(アイデア)です。生物と環境の関係への新しいアプローチといってもいいでしょう。大まかにいえば、生命がある意図をもって成長・発達、(あるいは進化といってもいいでしょうか)しているのではなく、絶えず、環境にアフォード(特性として与えられる)されて、変化し続ける、その結果や過程が見えているに過ぎないということです。従って、虫や動物のあらゆる行動や形態の変化について、何のためにその行動をとるのかと意図や目的を探っても意味をなさないというのです。

生き物の周りに、環境があり、そのありとあらゆる環境が私たちを含む生き物に単に存在するだけでありながらその特性を与え、生き物の行為を変化させ続けているというのです。

知覚と行動については、5感がバラバラに働き、その情報を脳が統合し、ある行動を指令するという系統がこれまでのとらえ方でしたが、アフォーダンスでは、そうは捉えません。

たとえば、視覚は、静止していても、動いていても、光学的変化として、空間をつくる物体の肌理(キメ)を捉えています。それにより、環境中の物体との間合いをとっているのです。肌理を捉える働きにより、距離を測ったり、壁との衝突を避けたり、熱いもの、傷をつけるものから遠ざかったりします。逆に柔らかく、暖かく、心地いいものには接近を許します。このとき、知覚システムとして同時に空気の振動や匂い、体温との温度差、踏んだときの硬さ、触れたときの柔らかさを捉えるなどしながら、生き物は環境に対して多様なアプローチの仕方で絶えず動き続けています。物体の変化が伴えば、さらにそうした環境の変化にアフォードされて、さらなる行動の変化が起こります。こうした環境への対応が私たち生物の行動を形作っているというわけです。

さて、そのように考えていくと、環境の光学的なアフォーダンスは、色彩感情に影響していきます。例えば「炎」は朱を中心とした階調の変化があり、揺らぐ特性を持ち、バチバチ・メラメラ、ゴーっという音と共に、灼熱の温度と物を焦がす臭気を伴います。炎が直接触れることを許さない危険な存在であることは誰でも知っています。対して、一面の氷は青く、海水も、川の水も、大抵体温に比べて低い温度であることは承知しています。こうして、人(動物)は色も環境の肌理における一つの状態として捉えることになったと考えられるのでしょう。その結果、色そのものに傾向を投影し、暖色、寒色などの色分けの判断や評価を可能にしているのかもしれません。

『アフォーダンス入門』では物事を白か黒かと分けて考えることをしていません。そればかりか、何かを予測しあらかじめ意図を持って観察するといった手法を論破しています。ただ、対象をありのままに観察します。したがって、数値の書き換えというデータ改ざんもなければ、捏造もありません。愚直とも思えるその観察姿勢は、「種の起源」で知られたダーウィンのやり方そのものです。本に登場するミミズの観察は、28歳の若さで見つけた「土壌の形成について」の論文発表から、死ぬ前年に発表された「ミミズの行為によって肥沃な土壌がつくられること、そしてミミズの習性の観察」までのダーウィンの44年間にわたる地道な観察を紹介したものです。

人は自分が直接しなくても、誰かの行動を規範にしたり、他人の到達点を利用して論を展開することができます。真似ること、咀嚼すること、それらをかき回して新たなアイデアを創造することもできます。「学問」そのものも変化することの一過程にあるといってもいいかもしれませんね。

話はがらりと変わりますが、もうすぐ北京オリンピックが閉幕しますね。興奮と落胆、感動と同情…様々な感情が、TV画面と対面する中、家に居ながらにして、わき起こりました。NHKの中継を見ることが多かったのですが、そのたびに、「♪一番きれいな色って何だろう…♪」という歌い出しのミスチルの「GIFT」が気になっておりました。


色のスペシャリストを目指して(というのは口幅ったいのですが…)勉強を続けているつもりですが、「一番きれいな色」などという「色」は何とも難しいテーマだと、それを考える度に頭を抱えてしまうのです。

環境のアフォーダンスからして、人間がもっともきれいだと思う色はどんな色なのでしょうか?

色彩感情の基本次元として、いわゆるSD法による調査でも、もっとも意見が割れるのが、「評価性」という次元です。誰にとっても美しいという色はなかなか定まらないものです。私個人にしてもそうです。「好き・嫌い」を問われても、質問に答える度に違いますし、これ、と1つ答えられるようなものではありません。

「白か黒をつけろ」という難題を突きつけられ…ても、迷ってしまいます。…白と黒のその間には無限の色が広がっている…。(「GIFT」に出てくる歌詞を引用しました)

それゆえ何らかの理論を裏付けにしたくなるものですし、今ある環境の中から見つけ出そうとするのかもしれません。目の前の色(配色)の魅力を分析して、そこから法則を抽出しようとする試み…。人間は誰かの試みを環境(狭義)とすることができます。無からの創造ではなく、絶えず変化する行為の中から創造される新たな変化…う~ん、深い。深みにはまっておぼれてしまいそうです。

ただ、深みにはまったとしても、悩みながら、あるいは模索を楽しみながらその時々の答えを求めていきたいと思っています。


この夏は色々と勉強できて本当に楽しく過ごせました。明日から生徒が登校します。いきなり忙しくなるんでしょうね。

頑張ります!!
by my-colorM | 2008-08-24 16:32 | 色の話
以前からチラリ、チラリと紹介しておりますが、日本色研の「色彩指導者養成講座」を受講します。

昨日そのテキストが到着いたしました。

これまで取得してきた検定試験や他の指導者養成講座で学んできたことを総括し、さらにレベルアップを図るといった内容になりそうです。といいますか、むしろそれを求めて受講しようと考えました。

本講座は、「モノづくりや空間設計」に携わる人たちに、色の知識や技能を教授できる人材の育成が本講座のねらいであるとしています。

そのため、テーマ設定が「色彩学」の学際的な性格を反映して大変広範です。しかもひとつひとつの内容が各級検定レベルはもちろんクリアした上での話、それを指導者としてどう的確に押さえていくのかが問われているような…、つまり、当然ながらかなり濃い内容となっています。というわけで期待を裏切らないテキストでした。

そのテキストを手にして、俄然、ファイトが湧いてきました!!がんばるぞ~っ!!


25日(金)の夜行バスで26日(土)の早朝東京入りします。宿泊は東京基地(息子の部屋)。大学の夏学期試験とバッチリかぶっていい迷惑!と思っている息子を尻目に、学生に戻ってしっかり勉強したいと思います。

26日には夕刻Miyabiさんと渋谷あたりで再会する予定ですが、東京近郊のお仲間とご一緒できたら幸いです。

講座の認定試験が2日(土)。4日(月)は全造大阪大会に要員参加することが決まっていますので、3日には息子と京都に帰ります。いずれの日にかお会いできそうな方は是非ご連絡下さい。ていうか、またこちらからもお声を掛けさせていただきます。

この機会に足を運ぶ予定の展覧会:東京国立博物館「対決-巨匠たちの日本美術」同「フランスが夢見た日本―陶器に写した北斎、広重 」東京国立近代美術館「カルロ・ザウリ展」「建築が生まれるときペーター・メルクリと青木淳」東京都美術館「フェルメール展」です。欲張りかなぁ。
by my-colorM | 2008-07-13 10:17 | 色の話
今日AFTジャーナルが届きました。

色彩講師養成講座13・14期20名の認定合格の皆さん、おめでとうございます。
13期の方とは昨年ご一緒しましたので、この方は…と見知ったお顔もあります。
1年待っての選考試験の結果です。ホッとされているところでしょうね。

14期の皆さんとは同期会誌「色も色いろ」でお近づきになりました。
お顔を拝見しておりませんのでどなたが14期の皆さんか分かりかねますが、
2度目のチャレンジでの合格お見事です。

再々選考になった方々、今はがっかりされているかもしれませんが、
与えられたチャンスを生かして、是非来年もう一度チャレンジしてみてください。
1年待つことはモチベーションを保つのがつらいのですが、お仲間の励ましもあるでしょう。
なんとか乗り越えていただきたいと思います。

今後色々なところでお見かけしたり、ご一緒したりすることがあるかもしれません。

皆さんのご活躍をお祈りいたします。
by my-colorM | 2008-04-20 23:27 | 色の話
本日は昨日の色彩基礎セミナーに引き続き、大阪駅前第2ビル6Fで行われたカラーコーディネーターシンポジウムに参加しました。

昨日お世話になった日本ペイントで車のカラーデザイン部でカラーデザインの仕事を手がけているという方から、ヒットカラーがどのように生まれるかというお話を、実際の自動車メーカーへのプレゼンテーションを交えて、聞かせていただきました。またもうお一方からは、デザインコンセプトをヴィジュアルツールでデザイナーに伝える手法を開発された事例を紹介いただきました。

車には縁遠い私ですが、これでも東商カラーコーディネーター1級商品色彩を取得している身。大変興味深くお聴きしました。

光輝材(アルミフレークや雲母片)の入った塗装により、カラーもさることながら、質の時代に入ったという自動車塗装の世界。ここ十数年は日本の自動車産業がリードしてきたともいえるカラートレンドの最先端を手がけているというその女性のプレゼンテーションは自信に満ち、聞き応えがありました。カートレンドカラーアウォードの受賞作品が自社製品であることを語る彼女の照れながらも満面の笑みを浮かべているその表情が印象的でした。

それにしても、トレンド動向の情報収集の極意は実際に足で稼ぐものだということがよくわかりました。どんな色や物が売れているのかをつかむために、インテリアのセミナーにも参加されるし、○○コレクションなどのファッションカラーもチェックされているし、店はもちろん、映画、美術館、出かけた先のありとあらゆる場面で本物を見ることが大事だとおっしゃっていました。もちろんテレビ・新聞・雑誌なども情報源として活用しながら、「時代の気分」を的確につかみ、次のカラー戦略を立てていく…。日々の生活がリサーチなんですね。

今開発している色は二年後に商品化(実際に自動車に塗装される)とのこと。若干思惑よりも早くカラー展開が進んでしまう分野もあるそうです。逆に、何年も前に開発した色が時を隔てて見直されることもあるようで、そこら辺がおもしろいところですよね。

さて、今は女性が元気な時代だそうです。車の色もファッション感覚で展開する時代になってきていて、以前では考えられないようなカラーが売れる原動力になっているそうな。

そういえば、セミナーにしろシンポジウムにしろ、圧倒的に女性参加者が多いです。車の塗装がテーマだったり、塗料メーカーの実習だったりするのに、大半が女性でした。

しなやかで粘り強い女性の時代がこれからも続いていきそうな気がします。

さて、もうお一方は男性でした。人の視覚の制御困難に触れつつ、ご自分が開発された光輝材入りの塗板を測色したデータを元に、立体的にヴィジュアル化するデザインツールについて、その利便性と限界とを事例をもとに分かりやすく語られました。

人間の目には強い放射エネルギーを瞬時に抑制する働きがあって、すぐに調整し順応しようとします。ところが光学機器はストレートにそれを電気エネルギーに変換します。そこで人間の目には色順応によって普段見慣れた色に置き換えられたある色も、デジカメで撮影すると大きな色ずれに感じられるほど違って見えることがあるというのです。ダイナミックレンジの問題ではないかと説明されていました。

彼は、それを凍った滝を写してPCで再現したときに実感したといいます。人間の目とカメラでは色の見え方が異なることを私は以前名古屋の赤幕の中で感じました。夏のお昼時、真っ赤なアーケードは私の目には赤く見えているのに、デジカメも携帯カメラもアーケードの骨組み以外は黄色く写っていたのです。インターネットで同じ場所の写真を見つけたときはそのようには写っていませんでした。おそらく撮影時刻や天候が全く違っていたのだと思います。そのときも刺激を弱めているんだろうとは想像しましたが、それが何故起こるのか自分ではきちっと結論が出せなかったことを覚えています。

ひょっとすると、今回の人間の視覚は制御困難というお話の中にその答えがあるのではないかと感じました。強い日差しの中で、目は強い光を抑制して赤に見ていたのでしょう。けれど光学機器であるデジカメはそのまま物理的に反映し、再現したということなのでしょう。

人間の視覚は、物理的に色温度をちょっと変えましょうといって変えられるものではないという厄介さがつきまといます。とりあえずそれがカラーコミュニケーションを難しくしているんですね。

久しぶりに外へ出て、色にまつわる勉強をすることができました。


明日から3日間は東京です。またおもしろい発見があればUPします。
by my-colorM | 2008-03-22 22:28 | 色の話