カテゴリ:図工・美術科教育( 36 )

東北地方の皆さん、本当に大変な被災に心を痛めております。
私にできることを探して、とにかく行動を起こそうと考えました。

まず、その一つ目として、今年度、社会に役立つデザインとして、授業で取り上げた
自動ラップ式トイレラップポントレッカー」の紹介です。

水のない被災地で、電源は必要ですが、それが確保できれば有用性は「大」です。

会社に次のようなメールを送りました。

「初めてメールいたします。上記(問い合わせシートに記入)学校にて美術教師をしております、○○と申します。
御社のラップポン簡易トイレにつき、グッドデザイン賞で見つけ、社会に役立つデザインとして、今年度授業で取り上げさせていただいた者です。
東北地方の現状を目の当たりにし、御社の製品が今こそその力を発揮する場面と思い、激励のメールを送ります。
また、製品の有用性を広めるべく、ブログ、ツイッター等で紹介させていただくことが、微力ながらも、私にもできる支援ではないかと思います。この件についてどうか了解いただきますようお願いします。
各地から要請があることかと思います。社員の皆さん、全力で対応いただきますよう、心より応援いたします。」

リンクをたどって製品について知って下さい。また、被災地に送ることが可能と考える方は会社に問い合わせるなどの協力をお願いします。
混色の理論を2つの方向性で見つめ直すとおもしろいことが見えてくるものだ。

その2つを「色票から」と「絵の具から」の2方向の見方に絞ってみようと思う。

色票からのアプローチとは、PCCSのカラーカードや、色研の標準色カードのような物をイメージしていただきたい。色相とトーンであったり、色名やマンセル値が示されることはあっても、その色を絵の具などの色材の混合でどう実現(再現)するかは表示されていない。

絵の具からのアプローチとは、仮に2色を混合するとして、どういった混合比を用いるとどのような色が作り出せるかという指標を基にした混色である。しかし、これはありそうでほとんどなかった。私が知っている限りでは、日本色研から20年位前に出され、リニューアルされてこちらの「混色ガイド」が出ている。また、最近中学校にサンプルが配られた教材会社の新製品で、画期的な製品として売り込みを掛けているらしい「混色カード」ぐらい。あまたある混色比率の中で、前者は12色相7トーンの84色、後者は絵の具の基本色11色+白、黒で120色に絞っている。というか、製品として成り立たせるため、絞らざるを得ないのであろうが。

色票の使用者、つまり理想の色を目の当たりにして色を再現する者は、その色を求めて調色するも、濡れ色と乾燥したときの色とのギャップや、再び同じ色をつくり出す技を、経験という時間の積み重ねで獲得しなければならない。その難しさから、あらかじめどういった混色比でつくったかメモをとることを勧めたりして取り組ませたものだ。こうした色づくりは勘といったり、技術といったりするたぐいのもので、中学生でこの技を身につけている者は圧倒的に少ない。あれこれ色をつくりながら絵を描くという積み重ねの中で、試行錯誤の結果、ようやく身につけられるかどうかというところか。経験値が物を言う、習得的、体得的な技術といってもよいのかもしれない。

かつて、色研の「色の学習1」を用いたことがある。そのうちの一枚のシートは、混色して目的の色コマの色をつくらせるというシートである。1時間の中で、早く、正確にどこまでコマの色に迫れるか、用意、ドン!とばかり、半ばゲーム感覚で取り組ませてみた。中には難なく全色クリアできた生徒もいたが、大半の生徒はお手上げ状態。当時は、小学校も完全に週2時間で、中学校に入学時点で多くの経験を積んできたであろう生徒であったにもかかわらずだ。小学校でも図工の時数が減り、今教えている小学6年生を見ても、そうしたスキルは格段に下がって来ていると想像するに難くない。

一方、絵の具を2色選び、混色比をもとに色づくりをする。(子どもははじめからそうそう絵の具を混ぜたがらず、チューブから出した絵の具をそのまま使うことが多いのだが…)実際には混色比つき色サンプルを目標に、基本色同士や基本色+白の2色間の混合比を守って、欲しい色を探る。これはほとんど未経験者の場合、予想しながら試行錯誤の末に色をつくるというよりも、すでに結果はわかっていて、実際このような色ができた、あるいはできるのだというマニュアルにしたがった作業にすぎない。限られた時間の中で、結果を出さなくてはならない場面(学校の授業など)では、即物的に混色結果が得られ、結果を作品化できるメリットは大きい。ただ、私の教え子の中でも、比較的学力が高い生徒が、比率をどう量としてとらえるかを質問してきた。基本色1に対して白4とは?と。自信がなく、確信を得ようとして相談に来たのだろうとは思うが、「チューブから基本色をポチッと出す。それと同じ量の白を4つ出してみて。そう、それが1:4。」。が、それなぞはまだよい。向こうでは、見るからに目分量で(というのも、こんもりと出した絵の具の山から筆で適当に持って行って)混色を試みている。比率の概念が多分に怪しい。あんなことをやらせるためにあるのではない。ん~、手がかかる。


コホン、元に戻そう。


一見同じように見える絵の具の混合という動作ながら、結果か過程かという問いを含む、考えさせられる場面となるところが興味深い。

教育とは結果か、過程か?

よい美術作品を生むことを一義とし、過程を除外視することは、美術教育の目標となり得るか。

試行錯誤をして、経験を積み、苦心の末自分の中に技を取り込み、スキルとして残すも、作品はそこそこであった。これは美術教育とは言えないのか。

色は、表現の上で重要な役割を担っていることは確かである。その色をどのようにしてつくるかということはどうであろうか。という問いを、今回の混色ガイドはもたらした。と私は思っている。

ちなみに、「混色カード」をもっと踏み込んで研究してみたことを次の機会にエントリーしてみようと思う。
お・ひ・さ・し・ぶ・り・で~っす!!


いやぁ、本当に久しぶりの更新になります。


夏休みに入りましたよ。それもあっという間にもう半分まで来てしまいました。


この間、美術部の活動は当初5日間の予定が一日増えて6日、間に夏季研修2日。
その後、自治会の納涼夏祭り要員参加、校区商店街のお祭り休日パトと
ほぼ休み無く来てしまいました。


そして、昨日、今日は、初めてでしたが、「近畿色彩教育研究会」に参加し、
興味のあった「色と光」の講座を受講してきました。

本ブログ。書きたいことは山ほどあったのですが、なかなか更新とまでは行かず、
ズルズル過ごしてしまいました。

かつての意気がどこかへいってしまったようです。

でも、色彩教育研究会の懇親会で、
私のブログを読んで下さった方から声を掛けていただき、ちょっぴり反省。
少しずつでも更新しなければいけないなと感じました。

そんなわけで、今回、夏期研を振り返っておこうと思います。


まずは、京都市中学校の美術科夏季研修講座。

今年最後になるかもということで、金沢からはじまった一泊の研修会なんですが、今回は
一昨年に続き、倉敷へ。

今回は倉敷芸術科学大学で、「陶芸」を学びに行きました。
内容は、①タタラ成形②呉須絵付け③色絵付け④手回しろくろ成形のたっぷり4作品の実習でした。

とにかく、大学の実習室で、先生方もはもちろんですが、現役の学生さんがあれこれと働いて下さり、
たくさんの準備と実習中のお世話をしてくれて、なによりも感謝感謝でした。

実習は本当なら下準備もいっぱいしなくてはなりません。もちろん後片付けもです。
焼き物を授業でやっていれば、その苦労は並大抵なことではありません。

2日間、快適に、制作にだけ集中できたのは、本当に皆さんのおかげです。

その中で、一日目昼からののタタラ(板づくり)では、「厚み」を考慮した型紙作りと、
底の部分を、裏返して、組み立てた側壁に上から貼り付ける技法を学びました。
さらに、接着部の隙間を細いひも粘土で埋める仕上げ方も具体的に理解できました。
作品は、生徒作品がいつも側面が垂直に立つデザインしか出てこないので、
側壁が傾斜する箱のデザインを念頭に置き、型紙を考えてつくってみました。

他の方々のアートな作品と異なり、課題解決が先立ちましたが、
使い途は、お家で晩酌用の「角形酒肴中鉢」という設定。
扇形に仕切り壁をつけてあって、4種盛りができ、中央の台に少しくぼみを持たせ
醤油やマヨネーズ、薬味、たれなどを差しておくところがあります。

1cm厚のタタラです。
側壁は丈夫そうでいいのですが、
扇型の仕切りが2枚分で2cm厚になります。
当初は4枚の仕切りの真ん中も空いていたのですが、
食器として使うには洗いにくい隙間ができるということで、
手裏剣のように十字にふたをして、台にすることにしたのです。

そんなこんなで、どうも、中央の星形十字が分厚すぎてバランスが悪い。
今回、講師をして下さっている、小島先生(陶芸作家)手ずから
「シャープな面がいいでしょう」と面取りの削りを入れてもらいました。

いやはや、他の方の創意工夫ある花器やら器やら…。
中には男雛なんぞもあったりで
本当に「うわぁ~、作家さんみたい~♪」と驚くばかりの中にあって
ちょっぴり気恥ずかしい実用品ではあります。
(焼き上がりが楽しみなような怖いような…)

夕食(懇親会)と宿泊先での二次会、お風呂とお宿の話…略。

…っていうか、今日全部書くのは無理っぽいから、とりあえずここまで。

いきなり「止め」です。(職場では「へたれ止め」っていいます。)


明日は出校勤務ですので。では。
日本教育美術連盟の夏期研究会が大阪天満橋「エルおおさか」で18・19日の2日間開催されました。中学校と校区の小学校に兼務する美術教師としては、両校種の図工・美術に関わっておられる先生方と交流できるまたとないチャンスです。両日とも楽しく、有意義に研修することができました。特に注目したものを書き留めておきたいと思います。

一日目の研究発表で、京都市の小学校の実践『すきな色見~つけた』を大変興味深く聞かせていただきました。これは小学校2年生の取り組みです。

校区に出かけて自分の町のきれいな色・好きな色の「組み合わせ」を見つけてきます。そしてそれがなぜ好きなのか、どうしてきれいと感じるのかをグループで話し合い、発表し合って深めます。最後に色画用紙の紙片を選んで白い台紙に効果的に貼り付けて色面構成し、教室に貼り出すといった活動です。総合の時間と図工の時間を使って取り組んでおられました。

まずはクラスのみんなでお出かけ。1年生のときに生活科の中で町探検で出かけて以来です。今回は商店の看板やポスター、コンビニやお医者さん、喫茶店のふとした出入り口のサインを「色の組み合わせ」という共通の切り口で見つけていきます。なんだか考えただけでもワクワクする活動です。当然、その気になって探せば、多種多様な色との遭遇が待ち構えていそうですよね。

この取り組みでは、子どもたちに「気にいったところは先生に言ってね。」と先生はもっぱらカメラマンに徹しています。事前に「ここは気に入るのでは?」と指導者がもくろんだ事例があっても、子どもたちにはあれこれと言わない。子どもたち自身の発見(=主体性)を大切にし、指導者の意図で誘導しないという点に感心しました。

後日教室で、持ち帰った写真データをプリントアウトしたものをワークシートに貼り、自分の気に入ったところを発問にしたがって記入します。それらを元に、違うものを選んだ者同士、同じものを選んだ者同士それぞれにグループで話し合い、みんなの意見を聞いて感じたことをまた記入して、という活動を通して鑑賞を深めます。

「色が2~4種類ぐらい組み合わされている」「はっきりした色」「似ている色」「ちょっとずつ変わっている」など、指導者とのやりとりで次第に「よさの感じ」が整理されていきます。子どもたちが好む色に、あらかじめ「配色」の視点を与えている点も素晴らしいのですが、そこにすでに「対照」「類似」「グラデーション」「トーン」の感覚が見て取れるというのが素敵です。また、ピンクや水色に「やさしい色」を感じ取った子には「○○ちゃんがやさしいからそう感じたんやね」と情緒的にとらえる子たちもいたとか。低学年の特徴をよく表しているように思います。

こうして鑑賞して終わらせずに、自分なりに表現活動を通してさらに確認していくというのがこの実践のすごいところです。色画用紙の紙片(テープ状、大・中・小の四角、三角、丸など)という制限を加える中で、自分なりに見つけたよい配色を再現していきます。(色画用紙をそのまま渡した別クラスの実践では具体物へと展開してしまい「色」のテーマがぶれてしまったそうです)事例の中には、友達が見つけた「同じ色をセットにして使っている」という気づきに共感して、違う形ながら同じ色を3組ほど組み合わせて表現することを思い立ったという作品例がありました。テープ状の色面が交差し、小さな2つの円が整然と平行に並べてあり、その子の表現意図がはっきりと感じられる作品でした。

これらの作品は教室の掲示板に、先生が授業のねらいをまとめた「すきな色み~つけた」の掲示物と一緒に貼り出され、保護者にも見てもらっているそうです。地域の写真とそこから抽出された色づかい。そこにもコミュニケーションの糸口もありますし、子どもの作品がうまい・へたの評価にさらされることも少ないでしょう。なによりも個々の子どもの姿が作品への取り組みから見て取れるので、「こんな発見をしていましたよ」など指導者の見取りを保護者に伝えやすい実践であることにも言及しておきます。

「いろんな色の組み合わせがあるんだな。」「きれいだな。」「楽しいな。」…低学年のうちからこんな視点で自覚的に積極的に周囲のものを見つめていくことができたら素敵ですね。
前々回の授業では言葉によるイメージトレーニング手法を学習しました。続いて前回は「アイデアスケッチ20×?」に取り組みました。

今回の授業では改めて「ふれあい」をテーマにイメージマッピングをさせました。

一番最初のセルに書き込む言葉があなたを絵を決めるものだと前置きをしておきました。

「人」(または「友達」)と書いた子どもがいました。絵が決まるということの意味は、その次にこのような質問をするからなのです。つまり、「人(友達)が一番気になるんだね。じゃあ、何をしてるところに「ふれあい」をかんじるのかなぁ?」と問うのです。

ここで2つ目の大事なキーワードが出てきます。すなわち、子どもがここで、「おしゃべりしているとき」と答えたり、「(一緒に)遊んでいるとき」と答えるのです。

そこで、「ふれあい」を中心に、絵を展開する時間と場所を決定づけるキーワードへと広げていきます。

たとえば、「おしゃべり」はどこでしているの?の問いには、「学校(教室)で」とか「公園で」などと新たなセルに書き込んでいきます。

私は、画面構成を言葉で設計するという試みをしています。「空」は上方に、「地面」は下方に地平線を設けて書き込みます。そしてs字の二本カーブの中に「川」と書きます。そしてその外側に「草」とか「花」と書いていきます。

そうした設計図を板書して、「こうして言葉を書くだけで絵が見えてきませんか。」と尋ねます。すると、「あぁ、何となく、見える。…見える!!」の声。「実はこれで大まかに場所が決まってくるんですよね。」というと、「そうか、外や。」。「それに、だいたいの時間もわかりませんか?」と問うと、「あ、昼間?」という答え。「どうしてわかるかいえる?」ついで代弁するように、「うん、そうだね、草や花が見えるということは周りが明るいからだよね。夜だと暗いからそこに何があるかはわからないわけです。」

前回、教壇に立たせて、「何が見える?」と尋ねました。視点を与えていくと、どんどん空間が見えてきたわけです。絵の画面構成もよく似ていて、画面に具体的な言葉を書き込むことで、視覚情報のように空間認識が形成されていきます。

さて、「教室で友達とおしゃべりしている絵」を考えたとき、セルは「机」「イス」「黒板」と追加され、さらに「黒板消し」「チョーク」「書かれている文字」などと具体的なイメージワードが加えられていきます。

作文などの文章表現でもそうですが、一つ一つ言葉が増えていく毎に情景が広がっていくことに気づかされます。言葉が加えられる毎に具体的な映像に置き換えられていくイメージでしょうか。そんな体験は小説などを読んでいる人なら容易に理解いただけるのではないでしょうか。

教室でどのような位置関係であるかはさておき、ある程度の情景描写ができたと思います。これが「公園で」となるとどうでしょうか。「公園」には「遊具」具体的にはと問うと、「ブランコ」「シーソー」「滑り台」「砂場」「ジャングルジム」…と言葉が加えられます。また「ベンチ」「花壇」「噴水」…と施設に設置されている設備が次々に増えていくわけです。

もうお気づきのことと思いますが、同じ「友達とおしゃべり(遊ぶでも)する」という二次的なキーワードの組み合わせでも、場を設定すると異なる「絵」が見えてくるのです。

こうやって、「時間」と「場所」が設定され、私たちは具体的に絵を描いていきます。「絵」にはなにかしらストーリー(描かれる背景)があります。そのストーリーを設計するツールが「イメージマッピング」だと言っても過言ではありません。大まかなテーマがある。描くべき中心がある。そしてそのストーリーが展開する場面を何を描くことで作り出すか。そうした手順をスモールステップでクリアしていくこと、それが、今回の授業づくりのねらいなのです。



「絵が苦手」「絵が描けない」という子どもにはいくつもの態様があると私は考えます。どの段階で描けないと言っているのか指導者は読みとっていかなければなりません。
見て描く力、想像して描く力が圧倒的に脆弱になっている我が校の生徒(小学生も…)に、限られた時間数の中でどうやって「スケッチ力」を身につけさせるか。この問題は、どうしようにも消えない悩みの種です。

小学生の苦手意識を取り除くために、今回取り組んだのは「アイデアスケッチ20×?」です。

これは、一昨年、中学校の3学年全員に「スケッチマラソン100」という取り組みで、A4サイズに4×5の20マスに「見て描く」、「想像して描く」、「テーマを決めて描く」など自由にスケッチするというシートを5枚与え、100個のスケッチを描かせたワークシートがあるのですが、それに少し手を入れたものです。

授業では、前回のイメージマップを返却し、「ふれあい」からたくさんのイメージワードを連想した取り組みを振り返り、その集中力や努力を誉めました。たくさん書いたイメージワードは、今回のスケッチの大切なヒントになります。

「この前は言葉をたくさん書きましたが、今回はたくさん絵を描いてもらいます。」と言って、黒板に「一秒で」と板書します。すると、「え~、一秒で絵描くの~?ムリ~、ムリ~!!」と大騒ぎする子どもが出てきます。が、「いえいえ、そんなことは私もムリと知っています。」といいながら、「…わかる絵を描く」と続きを描き、音読をします。

そうです。独りよがりではなく、相手に「一秒で」わかってもらえる、描いたものが何なのか伝わる絵を描くんですよと指示してワークシートを配布します。

ワークシート1枚につき20個、描けたら続いて2枚目3枚目は取りにくることとしているので、「アイデアスケッチ20×?」というわけです。中学生にははじめから5枚セットで配り、「スケッチマラソン100」としましたが、今回のワークシートは子どもの力量や意欲に依存するものとしました。

今回の取り組みは先にも述べたように、「苦手意識を払拭する」目的があります。そこで、一つ一つを小さく描く、「ふれあい」のテーマの準備として描くものですが、あえてテーマから離れても構わないものとしています。

1クラス目は「ブレーンストーミング」も「イメージマップ」も若干堅い雰囲気があって低調な印象でしたが、案の定今回のワークシートも1枚の途中でおしまいだったり、多い子どもで2枚、最高は4枚目までという結果でした。

でも、子どもたちの様子が本当によくわかる取り組みでした。何を描いたか、一つ一つ近くの子どもに尋ね、伝わっているのを確認して、ほっとしながら次に描き進めている子ども。何を描くのか迷いに迷って、絞り出すように描いている子ども…。どの子も手はゆっくりではありますが、じっくりと取り組んでいる様子です。

何を描くかで迷ってしまう子どもが数名認められましたので、途中で、「数を増やすための(ありがたい)ヒント」として、
 
①「○○シリーズ」で描く

  果物、野菜、丸いもの、理科室にあるもの、動物園、水族館、楽器、スイーツ、食べ物、スポーツ、…

②「あいうえお図鑑」

  「あ」のつくもの、「い」がつくものなど順番に探して描く

③「絵しりとり」(最後に「ん」がつかないように注意!)

と板書します。

こうするとだいたいの子どもはお題に事欠かない状態になります。すると、これまで手が進まなかった子どもも次第に描くペースが上がってきたりします。

それでも、まだ取り組みに消極的と見られる子どもが何人かいるもの。そんなときは子どもたちの相互の影響力を引き出します。

方法は簡単。3分間と決めて、教室の中を見て回らせる時間をとるだけです。

これまで自分やその近辺だけで展開していた取り組みは、この「見て回る」だけでダイナミックに変化します。恥ずかしがって隠している子どもも、いつの間にか近しい友達に見せて、なにがしか言葉を交わし、ニコニコと他の子どもの絵を見始めたりしてくれます。

その後がおもしろい。これまでよりもなんだか楽しそうに絵を描き始めるではありませんか。

そんな光景に何度か出くわしました。おそらく、「きっと自分はへたくそだから誰にも通じないだろう」と思い込んでいる子どもが案外多いのだと思います。自信がない子どもは絵に対して苦手意識を抱いてしまいます。

でも、友達にわかってもらえたという事実がまんざらでもないというちょっとした自信に変わり、他のみんなが描いている絵もそれほど違わないことにも気づき、同じように自分も絵を描いてみようという意欲につながっているのかなと感じます。

私は、毎年、簡単に「描けへん」と言って課題を放棄してしまう生徒にたくさん出会います。その経験から、描かないから描けなくなる、そして自信がなくなる、苦手意識が増すという「負」の連鎖を強く感じるのです。

逆の発想でとらえると、絵が描けるようになるには、たくさん描くがよいということになるでのではないでしょうか。そのための一歩は誰かに自分の描いた絵が何かわかってもらえる経験=自信なのではないかということなんですね。

いきなり白い大きな画用紙に向かって、「ふれあい」をテーマに描きましょうと言われても私だってそうそう描けません。そこでこのようなスモールステップでテーマに迫っていく手法を取り入れているのです。

「アイデアスケッチ20×?」は、次回、「ふれあい」のイメージマップをさらに、前回書いたように「自由連想」ではなく「固定連想」で展開し、主要アイテム(何を画面に登場させるか)を探らせることから再スタートを切ろうと考えています。

授業の最後にそう予告をしました。

そのときに、さらにもう一つのメッセージを伝えました。

一人の子どもを黒板を背に立たせて、指導者と同じ目線で教室を眺めさせました。そして質問責めにします。

指「何が見える?」
子「人(みんな)」
指「みんなの他は?」
子「机」
指「机は浮いているの?どこにどうなっているの?」
子「??…置かれてる?」
指「…というと、どこに?何が見えるの?」
子「地面、教室の…床?」
指「そうだね床が見えるね。だんだんいろんなものが見えてきたね。じゃあそうやって見ると他に何が見えるの?」
子「ドア、掲示物、…」
指「そうだね、その下にはロッカーがあり、その中のランドセルなども見えてきたはずだね」

という風に、私たちの身の回りには何もないというところはなく、目の前のありとあらゆるものがその場の空間を占めています。ところが、そのように目の前にありながら、私たちはそれらすべてを常に見ているわけではありません。見ると言うことは大変あやふやであり、意識しなければならないことだということがわかります。

目の前にありながらも見ていないことが多い。だからそれを絵に描くということだってかなり難しいわけです。見てもいない(想像してもいない)ものを具体的なわかる絵にすることはできません。絵が描けないというのは、目に入ってこないという空間把握・空間認識の問題でもあるのだということなのではないかということです。

子どもたちにはそんな難しいことは話しませんでした。そのかわりに話したことは次のような内容です。

絵というのは、一つのアイテムを描いたら、さらにその周りをどんどん他のアイテムで埋めていくことでどんどん豊かになっていくんですね。先ほど、○○君に教室を眺めてもらいましたが、最初は人しか目に入りませんでしたね。でもどんどんその周りにいろんなものがあることに気づいてくれました。それと似ています。また、絵には時間と場所が描かれます。その絵が表しているのは「いつ」なのか、「どこ」なのか、そうやってストーリーを作っていくようなものだと考えてもいいでしょう。

そういいながら少し具体例を示しました。そうした話をしている間、聞いておられたT2の担任の先生の方がウンウンとうなずいていたのが新鮮でした。

次回は「ふれあい」という言葉であなたが一番ピンとくることは何ですかと問いながら、イメージワードをさらに引き出し、絵に描いてもらおうと思います。
今年度の小学校の授業が始まりました。

だいたい、出会いの授業は「発想トレーニング」です。

前回の授業では、「ブレーンストーミング法」に取り組みました。これは毎年行っている、与えられた形から①絵を完成させる②何に見えるかを言葉で説明するという2つのタイプの課題について、短時間によりたくさん、またできるだけ他の人とは違うユニークな発想を目指すという発想法です。毎回、初対面のオープニングの授業ながら、かなり盛り上がる楽しい取り組みとなるのですが、今年も子どもたちの授業の振り返りでは、「楽しかった?」「がんばれた?」「またやりたい?」の質問にほとんどの子どもたちが「とても」・「まあまあ」にマークしてくれました。

さて、今回は2回目の授業。実は、別のトレーニング法の授業を用意していたのですが、朝一番に校長先生から直々に絵画展への絵の出品を依頼され、全く考えていなかった課題を飛び込みで入れることになりました。いきなりテーマを告げられ、瞬間凍りましたが、ちょうど発想法を展開するつもりでしたので、急遽「イメージマッピング法」を取り入れて授業をすることにしました。このイマージマップというのは、いくつかの方法があるのでしょうが、昨年のキッズゲルニカで、「Love &Peace」の原画に取り組むときに提示した「イメージWeb(蜘蛛の巣)」を想定しています。子どもたちに自分で「Web」をつくらせようというものです。

校長先生から告げられた絵のテーマは「ふれあい」。ザクっとした、ストレートに絵に表すにはなんともハードルが高いテーマ設定といえます。これではいきなり苦手な子どもを作ってしまいそう。何とかとっかかりを築かなければなりません。僕にも私にもこれなら描けそうという材料を自分の手で見つけてもらいたいものです。

幸い授業までに1時間の空き時間がありましたので、まずは私自身がマッピングを試みることができました。

具体的にはメインワードである「ふれあい」を中央に書き、そこからいくつものの枝を伸ばして思いつくままに言葉の箱を増やしていきます。新たな箱からさらに一本または複数の枝を伸ばし、そこから連想される言葉を書き、さらに…といった具合に思いつくままどんどん「イメージワード」を引きだしていきます。

「ふれあい」から連想したイメージワードは「絆」「握手」「笑顔」「人」「動物」「心の」「人と人との」「友達」「家族」…。さらに二次、三次と言葉は増え、「キャッチボール」「チームワーク」「リレー」「スクラム」「応援」「結ぶ」「支え合い」「一緒に」「みんなと」…などとどんどん出てきました。具体的に絵にしていく言葉はそれらのイメージワードからふくらませていけば何とかなりそうです。



校長先生から朝の挨拶時のいきなりの提案でしたが、「できない」と決めつけず、与えられた残り時数でぐるぐると頭の中で制作過程を計算してみました。そう考えると今回が発想法を試みる最初で最後のチャンス。そこでこの連想法を「発想トレーニング」の第二弾として取り入れることにしたのです。

突然の変更で、PCも手元にないので、B4横で、手書きでワークシートを作りました。
書いたのは

  「発想を広げよう」
  (イメージマップ)

  「ふれあい」をテーマに絵をかきます。
   あなたならどんな絵をかきますか?

  ※思いついた「キーワード」を書き、
    さらに広げてイメージをふくらませましょう。

です。

その中心に「ふれあい」と楕円の中に書いておきます。そしてキーワードを書き込む楕円を子どもとの約束で「セル」と呼ぶことにしました。そのセルから複数の線(同様に、これを「糸」と呼ぶことにしました)を伸ばして別のセルを用意しておきます。空いたセルを埋めさせ、そこからは子どもたちが自由に糸を書き加え、セルを増やせるものとしました。

さて、授業が始まりました。前回の授業を簡単に振り返り、学習モードに切り替えます。そして、早速ウォーミングアップのため、クラス全員で連想ゲームを始めました。私がお題を最初の子どもに示します。すると指名された子どもが「○○といえば…」の続きで連想した言葉を言います。次の子どもを指名して、「では○○といえば?」とつないでいきます。これは「自由連想法」とでも名付けておきましょう。その場合ははじめのキーワードから離れても構わないとしておきます。なぜ自由連想を取り入れるのかというと、はじめのキーワードを固定した連想法だとすぐにアイデアが枯渇し、発想法を楽しむねらいが達成できそうにないと考えたからです。今回はイメージがどんどん膨らみ、それぞれが自分なりに限りなくアイデアを出すことができるのだという発見を、この授業の中で子どもたちにしてもらいたいと考えています。

「朝ご飯」をお題にしたら、「納豆」「味噌汁」「豆腐」と続きました。これは「キーワード」が固定されています。これでは、「朝ご飯何を食べた?」という単なるアンケートになってしまいます。これは、「時計」でも同じです。必ずと言っていいほど「針」「時間」「数字」のように「時計」に固執してしまうケースがでてきます。そこで、キーワードが次々に更新することを告げ、しきりなおします。「朝ご飯から宇宙に飛ぶことだってあるんだよ…」と。

このような仕込みをしてからプリントを配ります。先に挙げたようなねらいをふまえ、「ふれあい」からでているセルにキーワードを書かせていくのです。

最初は、指導者が簡単な例を示します。用意していったいくつかの言葉を見せ、「ふれあいといえば、○○」といくつか紹介します。「今の例で、ピンときた言葉からスタートさせてもいいし、自分で言葉を探してくれてももちろんいいです。」

制限時間を確認してからスタートを告げると、ゆっくりと言葉を吟味しながら子どもたちの鉛筆が動き出します。次のセルから伸びるセルがだんだん「ふれあい」から離れていってもかまわないということを助言します。
とにかく、今回はブレーキをかけることなく、書き続け、子どもの中からイメージやアイデアがあふれてくる感覚を体験することが目的なのです。

結果、2クラスともほとんどの子どもが熱中してセルを増やしていきました。ときどき詰まりそうになる子どもたちには、違うセルに飛んで、そこからまた続けるようにと助言します。異なるセルから延びるセルがどんどん別の食指を伸ばし、思わぬ展開をしながら成長していきます。そうしながらB4のプリントがところせましとばかりに言葉で埋まっていく様子は、T2でみてくださっている担任の先生にもおそらく頼もしく感じられたのではないでしょうか。他の何人もの子どもが裏面にも書き進めるほどの集中を見せる一方、中にはつまずき見せる子どももいます。そんな気になる子どもには気心の知れた担任の先生が、先生ならではの声かけをしてくださり、次第にその子どもなりに鉛筆を走らせるようになります。先生方にも様々な子どもに新鮮な可能性を見出すことができたものと思います。

子どもたちには、途中で「授業の終わり頃には、自分の頭の中で「爆発」が起こっているかもしれません。」と告げていました。言葉が次々とあふれ出し、絶え間なく手が動いている状態を指した状態が訪れるだろうということを「爆発」という言葉で表現したのです。実際、それがプリントの中であたかも爆発したかのような形で現れた子どももいました。一つのセルからいくつもの糸が出てあらゆる方向にセルが伸びた状態はまさに「爆発」です。

「セルが別のセルと関連する場合には糸をのばしてつないでもいいですよ。」とも声かけをしています。すると、プリントの中に無数の連携が形成され、まるでシナプスのモデル図のような形状を見せる例も出てきました。

こうして、終了時間を告げる頃には、どうしても湧いてくる言葉を書き留めたい欲求に指導者がブレーキをかけなければならないほどでした。授業の最後、子どもの表情は充実感に満たされていました。振り返りの結果もほとんど満足の様子。自分から思いがけずたくさんの言葉が出てきたことに驚いたという感想がいくつもありました。また、たくさん書けて楽しかったと感じたようで、素直に喜んでいる姿にこちらも嬉しくなりました。

さて、発想が「拡散」だとすると、構想は「絞り込み」です。ブレーキをかけることなく暴走し、時には爆発すら見せたアイデアですが、残念ながらそれらのほとんどは使いものにはならないでしょう。次にやることは目に見える無数の言葉のセルを①「(絵として)実現できる」②「テーマに即している」の条件でふるいにかけ、絞り込む作業です。

絵を描くにせよ、作文をするにせよ、はたまた大人が企画書などを書くにせよ、「拡散」と「絞り込み」をもって発想→構想の手順を踏んで具現化していきます。広げるのも多様なら絞り込みも多様な展開を見せるはずです。

こうした手順を踏むからこそ、一人一人の作品に多様なバリエーションが生まれるのです。借り物の発想や指導者の理想によって画一化された画面構成に私が違和感や不信感を覚えるのは、多様な子どもの可能性に目を向け、立脚するからに他ありません。人にある程度の傾向やタイプ分けが認められるとしても、名前や顔かたちの違いと同等の、発想・構想の多様性を無視することはできないと思うのです。



次回の授業は画面に取り入れるアイテムづくり→画面構成です。絵を苦手と感じている子どもたちとどう向き合うか。

見てかくスケッチと想像してかくスケッチの双方の力を飛躍的に伸ばす画期的な方法というのがあれば…こればかりは決定打がなく、試行錯誤の連続です…。
ピカソが、『ゲルニカ』に要した期間は約一ヶ月。

1937年パリ万博のスペイン館の壁画制作を依頼されていたピカソ。「ゲルニカ空爆」の5日後の5月1日、「ゲルニカ」の構想が始められた。世紀の大作「ゲルニカ」は、5月11日にキャンバスに描き始められ、6月4日に完成している。

こうして構想から完成まで約一ヶ月で、かの世紀の名画はこの世に誕生したのである。

さて、我が方の「キッズゲルニカ」は、実質8月29日の展示リーダー会議からスタートしました。ステージ上に掲げるのは10月1日。9月一杯で完成をしなければなりません。これはピカソの制作期間とほぼ同じといっていいでしょう。

かのピカソは天才とはいえ、この間に45枚の習作を残し、およそ350cm×780cmの画面に一人で立ち向かったわけですが、こちら「キッズ」は58名の生徒と4名の教員スタッフがいます。

制作にあてられている正規の授業時間数はガイダンスを含め10時間。放課後や時間外にスタッフの企画の時間をつくるとしても、結構かつかつの時間と言わなければなりません。

そこで、指導者側の読みと段取りが必要となるわけです。今回はこれまでの制作に、私が指導者としてつけてきた段取りについて記したいと思います。

○原画作成

私は、これまで毎年制作される生徒会タペストリーを担当してきました。生徒総会での披露に向け、生徒会のリーダーたちが決めるスローガンに合わせて、約1.8m×1.8mの正方形の旗をつくるのですが、メンバーはたいてい1~3年の有志30名を超える人数が集まります。

メンバーには力量差もモチベーションの違いもあります。制作期間が5月~6月とあって、少し部活動の練習に疲れた生徒が、部活を休む口実にするために制作に参加するということも残念ながら少なからずあります。

とはいえ、参加した以上は達成感を味わわせたいということで、全員で原画づくりから始めます。学級旗制作などでは、おのおのが描いたデザインをクラスで投票して決めることがしばしば行われますが、タペストリー制作では段階をいくつも踏んで、協議を繰り返しながら原画決定・配色計画をします。少し大きな画面では共同責任というのが愛着につながっていくように思います。

最初はそれぞれがスローガンをもとにキーワードを拾いながらアイデアスケッチをします。
そのときに言うのは、「一枚の絵として完成させてもいいし、一部を採用する場合もあるから、とにかく自分なりの思いを形にしてみて。」です。「みんなで一つのものをつくる体験を楽しもう。」ということもよく言います。それらのアイデアは並べて検討し、誰かがまとめて次に提案する…を繰り返しながら、参加者が次第に合意を形成していきます。

原画が決まれば配色も全員がとにかく色鉛筆でやってみます。時間に余裕がないときは下書き作業と並行して行うこともあります。どれも完全な配色はしていなくても、いいとこ取りをしながら魅力ある画面を模索していきます。これはいいと思えるものを一度目に見える形にして、説得力のあるプランにしていかないと話し合いは混乱し、やたら時間がかかります。生徒が残したものを次には形にして示す…これが指導者の役どころかもしれません。生徒がつくってきた形やイメージを、生徒の声や要望を聞いておいて、もちろん必要なアドバイスを込めつつ次の機会に向けて準備をすることが、着実に前へ進める上で必要不可欠です。

こうしたノウハウが、担当者以外の先生方には伝わりにくいのが残念です。原画が決まれば、作品はできたようなもの。配色までできていれば、あとは目標を達成するためにやることが見えてきます。ところが、大抵の先生方は、一番苦しい(本当は一番楽しいのですが)原画づくり、つまり、構想の段階での生徒の動きやそれを引き出すための仕掛けにあまり関心を示さないのです。

絵が描かれるとき、アイデアスケッチから原画へ移行する際、同じイメージの繰り返しから、ふとしたきっかけで逸脱、跳躍、飛躍が生まれることがあります。何故、どうしてその変化が生まれるのかというのはとても興味深く、これこそが醍醐味ともいえるのではないかと思うのですが、とにかく、ドラマチックに画面が変わることがしばしばあります。そこで、種はできるだけ豊富に蒔いておくのです。バラエティに富んだスタートは「変化」のあらゆる可能性を秘めています。

その変化は待てばよい。待っていると必ず変化し、動き出します。それが集団で制作していく楽しみです。生徒会のタペストリー制作でも、今回の「キッズゲルニカ」でもそうして画面がつくられていきました。また、生徒がある工夫をしたら、それを惜しみなく取り入れます。大きな画面では、「いいとこ取り」がアレコレとできるので、採用された生徒からは喜びの声を聞くことができますし、互いのよさを認め合う機会になります。全体の画面の骨組みは確保した上で、細部に生徒一人一人の活躍のチャンスを与えると、それぞれの参加度が高まります。


○限られた材料を無駄にしない

学級旗制作ではほったらかしにしておくと、絵の具がどんどん減ってしまいます。一枚の学級旗の小さな面積に着色するのにどれだけ絵の具を出すの?という場面が多々見られます。混色の要領がつかめていないという点もありますが、面積と量の経験値が低いのが原因だと思われます。大量の絵の具が廃棄されていきます。もったいない。またいきなりの計画変更も多々起こります。十分に検討されないままスタートしてしまい、混乱の末、塗り替えになるわけです。重ね塗りほど無駄なものはありません。

キッズゲルニカも多分に漏れず、大量の絵の具を必要とします。できるだけ安価で、かつ、耐久性の高いものを選ばなければなりません。今回採用したのは、イベントカラースパウトパックA・Bセットと白2本、布用メディウム2本です。厚塗りをしてもひび割れが少なく、布への付きをよくするというので増粘メディウムを少し混ぜて使うことにしました。白はセットの1本とで計3本ですが、ひょっとするともう一本買い足さなければならないかもしれません。混色用には白は欠かせません。予算要求の都合で、原画ができる前に要求しなければならず、本来ならば、配色が決まった時点で単色を注文するつもりだったのですが、係の先生が、大作だから急ぐだろうと気を利かせて注文してくださったのでした。係の先生とは十分連絡を密にしておく必要があります。

では、与えられた絵の具をなおさら上手に作品の配色に生かして行かねばなりません。
(/_;)
そこで、画面全体に主調色を用いて彩色するのではなく、満遍なく配色することにしました。12色の色を使いこなしていく難題へのチャレンジというわけです。

スパウトパックとは、ビニール製の袋状の容器に蓋がつけられたもので、別の容器に移し換えて使用しなければなりません。ゴミが減量できることと少しだけ割安感があるというので採用しました。イベントカラーはすこし透明感があって、被覆力は同タイプのスクールガッシュの方が高いのですが、何と言っても価格が安くないと…ということで致し方ありません。用意するものは蓋付き容器。以前、鮭フレークの瓶を集めていましたが、こんな時に役立ちます。これも以前購入していたのですが、ドレッシング用の撹拌容器。これはフタを押さえて振りながら大量に同じ色をつくるのに便利です。大きな蓋付きというと、キムチのプラスチック容器が安定感があっていいですね。若干ニオイが気になりますが…。こうした移し換え容器を用意しておくととても重宝します。比較的少量の絵の具や修正用の絵の具は蓋付き瓶に入れておき、ラベルを貼っておけば必要な場面ですぐに供給できます。そして大面積はドレッシング用容器で1本~3本と大量につくっておきます。作業用のカップにどんどん注いでやれば、一気呵成に絵の具を求めてくる生徒を待たせることはありません。大面積の作品では、調色管理も指導者に求められる段取りの一つです。一度塗りで余った絵の具はこうした蓋付き容器にとっておくのです。制作が終わったとしても、混色した色であってもしばらくは保存可能。美術の授業や部活動に使えるものは使えば、環境中への垂れ流しも少しは減らすことができます。「もったいない」を地でいく私です。

彩色の手順も大切です。水彩画での指導と同様、バックの面積が大きい箇所から彩色させます。このとき、大面積ですと自分の彩色箇所の錯誤が考えられますので、あらかじめ下書きは鉛筆でしたあと、その色に近いペンでなぞっておきます。複雑に見えるところは、事前に少しだけ彩色を施しておいて、間違いを回避する配慮も必要です。彩色計画は入念に立てておかないと、たくさんの生徒で作業するときは混乱しかねません。

今回、制作場所はフローリングにした教室です。キャンバスを広げると長辺が教室の前後にまさにピッタリサイズ。生徒が58名全員で作業するのは不可能です。そこで、全体を8つの部分に分け、8班編制で取りかからせていますが、画面上半分、下半分で作業時間を分けています。従って、余計に、あらかじめ色をつくっておく必要があるのです。着色作業の時間、他の班には裏番組もつくっています。担当教師が誰になっても成立するような内容を示し、準備にも参加していただいて、こちらは「キッズゲルニカ」に集中できるように段取りを組んでおきます。裏番組の作業は、各教科展示のタイトルづくりです。今回は白抜きした文字にある色鉛筆画の構成作品(模様が美しい)を写させ、思い思いの色で彩色していくという課題で、生徒は写し絵だと思って気楽に取りかかりますし、色鉛筆の彩色を楽しんで、やり出したらはまります。思いがけず集中して取り組む姿に担当の先生方が驚いていました。

○彩色の醍醐味はこれから

これまではほぼ各班で同じ色を塗るという単純作業でしたから、あまり考えなくても、楽にできる点でどの子もしっかり取り組んできました。中には違う班の部分も塗りだして怒られた子もいましたが…。ここからは各班で取り組みが違ってきますので、指示がさらに増えていきます。短時間に上手く伝える方法と、色づかいが複雑になってくるので、調色管理も一層重要になってきます。段取りのよさが問われます。

あと実質5時間の勝負。まだまだ完成までは楽観できませんね。
先週ようやく着色が始まりました。あと2週間。月火水の取り組みで完成!…できるかっ?

夏休み前に「やる!」と簡単に宣言してしまった、『キッズゲルニカ』の取り組み。
ご存じの通り、ピカソの、反戦メッセージを込めた大作「ゲルニカ」の、あのどでかいサイズだけを借りて、子どもたちが「平和」への願いを込めてキャンバスに絵を描く取り組みです。

夏休みに入る前に、ようやく文化祭の役割が決まりました。本校では学年を展示、舞台の二つに分け、それぞれ「総合の時間」を使って、発表へとつなげていきます。今年の展示担当は58名。メンバーが決まったところで夏休みに突入してしまいました。

読みの浅い(…いや、深い?)私は、1年生美術の夏休みの宿題の一部にその原画を描くという課題を出して、夏休み明けまで事実上放置していたのでした。宿題は、四つ切り画用紙を配り、「我が街○○」「人権啓発ポスター」「CO2削減ポスター」と「キッズゲルニカ原画」の4つを設定し、その中から選択して取り組むという課題でした。キッズゲルニカ原画は1年生だけの課題です。

大義名分上、原画を一部の子どもたちだけ集めて夏休み中に描かせるということができない縛りを、無意識に、かけてしまっていたんだと思います。

夏休みの宿題でどの程度描いてくるかについては、はっきり言ってあまり期待はしていなかったのですが、結果、思った以上に原画を描いてくる生徒が少なくて、(たった3~4名でした)結局、全員に訴えかけて、みんなに原画を描かせて検討するということになったのです。

夏休み明け。いくらなんでも最初の取り組みで、いきなり「『平和』をテーマに絵を描きます。」と言っても、なかなか描けるものではありません。そこで、文化祭のテーマ「Love & Peace」と絡めて、「愛」ってどんなことばとつながるかな?、「平和」ってどんなイメージかな?…ということで、私なりのことばによるイメージマップをつくって印刷し、子どもたちに提案しました。

「愛」-「好き」、「人間」、「喜び」、「こわれやすいもの」、「守るべきもの」、「家族」、「隣人」、「苦しみ」…すべてを挙げませんが、結びつくことばを、ありとあらゆるものを粘りに粘り、振り絞って列挙しました。

同じく、「平和」-「安らぎ」、「温かさ」、「安全」、「安心」…、対立するものとして「戦争」を挙げ、その関連語を書き連ね、イメージと対比させてチャートで示しました。

それから同じプリントですが、今度はことばによるイメージマップを、表現するための具体物として、これも単語で示しました。「空」、「雲」、「太陽」、「鳥」(ハト、不死鳥…)、「地球」、「月」、「飛行機」、「紙飛行機」、「風船」、「気球」、「たんぽぽの綿毛」、「ひまわり」、「四つ葉のクローバー」、「宝箱」、「シャボン玉」、「ハート」、「人」、「道」、「足跡」、「木」、「草花」、「蝶々」、「ハートマーク」、「握手」、「リボン」、「世界」、「国」、「日本」、「京都」、「学校」、「スポーツ」、「歌」、「楽器」、「音符」、…。一部しか紹介しませんが、これらのイメージワードを、ゲルニカの作品の比率に近い長方形の中に、その絵が描かれそうな画面上の空間に配して、子どもたちに伝えたのです。

「愛」とか「平和」には、実はたくさんのイメージがあるのであって、単純に「ハート」や「ハト」、「スマイル」「国旗」…といったマークのようなものだけで表せるものではないこと、人間が、互いの関わりを強めながら、ようやく築き、そして守らねばならないものなのだというメッセージを送ったつもりです。

そして、一人一人に、今回の取り組みで自分が表してみたいイメージをプリントのイメージワードなどから選ぶように指示し、ついでそれを簡単なラフスケッチで表現させ、回収しました。

子どもたちのピックアップしたイメージワードやそのスケッチを集めると、なんだかとてもいいものができそうな予感がしました。

2日後、放課後の原画検討会(学年担当者を8つに班分けし、それぞれから原画担当者を選出させてます)で、具体的なイメージにつながりそうなスケッチを少し多めに取り上げさせました。それをもとに、いよいよ原画づくり開始です。

非常に難しい取り組みではありましたが、「太陽」、「虹」、「宝箱」、「たんぽぽの綿毛」、「足跡」、「ハト」、「ハート」、「シャボン玉」、「地球」、「木」、「道」などの絵がピックアップされ、それをどう画面に配置するかが検討されました。

その日に、宝箱からハートや風船が飛び出し、校舎を巡りながら広がっていくというイメージにまとまりかけましたが、一日寝かせて、休日に、改めて検討しようと言うことになりました。

部活動が始まる前の時間をねらって集まったメンバーで、続きの検討を始めましたが、宝箱の背後に生徒が肩を組んで長い人の鎖をつくり並んでいるというイメージに決まりかけました。そこで実際にキャンバスを見てみようということになり、それを広げた部屋に移動しました。その大きさに、はしゃいで、生徒が寝転んだそのとき、閃光が走ったのでした。

キャンバスシートは縦が350cm、よこが780cmあります。丁度横方向の折り目2マスで背の高い男の子の身長ぐらいです。

ふと「人文字でPEACEができそうだ!!」という直感が閃いたのです。そして、一声かけて、Pの縦線をやらせてみた後で、生徒にことわりました。「今まで考えてきたことを、ごめん、覆すようだけど、人文字にピンときてしもうた。そこだけ私にやらせて欲しい。PEACEを人文字でやってみたいねん」と。すると、2人の生徒が、キャンバス上でいくつかの文字になりきって見せてくれました。いよいよ確信が湧いてきました。

次の日。決まりかけた原画と、検討会でピックアップしたみんなのスケッチを集めたプリントを資料に、人文字の秘策をひっさげて、みんなに提案です。多くの支持を得て、人文字に票が集まったところで、では、人文字の背景画をさらにみんなに描き加えて欲しいと再提案して、それぞれにバックを描く作業をしてもらいました。

PEACEの背景に、ピックアップしたスケッチをもとに、思い思いに描き込んだ原画がいくつも提出されました。実現可能で、さらに組み合わせていけばよりよくなると思われるものを8つに絞り、三回目の時間に投票をさせました。その日の残り時間は、全校の取り組みであるハトとハートの形に切った画用紙を貼り付ける掲示物(はさみで切り抜いたものにそれぞれが意気込みを書き、掲示物とする取り組みです)の学年全員に配る下準備として、はさみでそれらを切り抜く作業をしてもらいました。

そして選ばれた上位4つの原画案を組み合わせる…。そこは指導者がグッと支援の手を入れてしまいましたが、何とか1枚の原画が出来上がりました。

今回の文化祭の取り組みでは、舞台の生徒たちは、「Love & Peace」をテーマにした創作打楽器演奏をします。たとえばフライパンや箒、ドラム缶が楽器になります。彼らのステージバックとして、展示の「キッズゲルニカ」を活用します。そこで、1年生一体の取り組みとして、全員に原画を紹介することにしました。

広い部屋に生徒を集めて、決定した原画を見せ、キッズゲルニカのキャンバスを全員の前で広げました。その大きさを確認した後で、とてつもないチャレンジが君たちを待っているのだと伝えました。教室に帰って、学校祭への意気込みを、件のハトとハートに思い思い書きましたが、「キッズゲルニカをしっかり完成させる」などの書き込みを見るにつけ胸が熱くなりました。

夏休み明けからのスタートで、完成は9月中を目標にしています。

すでに9月も三分の二が過ぎ、やや焦る気持ちもありますが、段取りをつけられるところはめいっぱいつけて、しっかり追い込ませていこうと思います。

その段取りアイデアは次回あたりに紹介しようと思います。(つづく)
夏休みまであと1週間となりました。
毎日深夜帰宅の2週間が過ぎ、今日ようやく自宅でゆっくりしています。

前回の話題は忙しい中でもホッと一息の映画鑑賞のお話でしたが、
この2週間はもうそれどころでは…。

PCもおちおち開いていられないほどのハードな毎日でした。(ハイ、言い訳です!)

まず何が私を忙しくさせたかというと、次のTo Doをご覧になると明らかです。

○宿泊学習6/26・27。保護者会7/3夜に向けビデオ編集。→1日に完成し学年主任に。
○3年生三者懇談用仮評定(進路指導含め、学習の進め方を考えさせる資料です)作成。7日締め切り。
○2年生焼き物の授業準備。追加道具発注。班別に道具を仕分け→7日・9日授業実施。
○パパ、ウィルス性腸炎。39度の発熱でダウン。先週は予定の土曜出勤足止め。
  日曜出勤で焼き物の道具準備を間に合わせる。
○PTA広報の準備と支援(夜会合)。→昨日ようやく業者に原稿を納めることができました!
○1年木曜朝学習→これまでの授業のまとめとなる美術・色彩用語のクロスワードパズルを作成しました。
○1年生文化祭展示企画。→「キッズゲルニカ」に取り組むことに決定!(また忙しくなるなぁ。)
○7~10日計4回放課後焼き物補習。未完成者のケア。→事後、後片付けが毎回2~3時間。
○夏休みの宿題配布準備。→ガイダンスのプリント作成。四つ切りケント紙を巻いてゴム止め。
○この間、小中とも平常授業。補習以外は部活動。


…と、我ながら超ハードな2週間でした。

さて、本校は一般教室と違い、美術室にはクーラーがついていません。しかも美術室とは廊下を挟んで向かい側に一般教室が並ぶというちょっと変わった教室配置になっています。一般教室でクーラーを入れると窓やドアが閉じられ、風通しが非常に悪くなります。暑さに耐えられず、壁付きの扇風機をフルに回すのですが、熱風をかき回しているという状態です。

そんな中、例年通り焼き物の授業(もちろん補習も)を敢行しました。これには少し事情が…。焼き物の授業では粘土ももちろんですが様々な道具を使います。その準備や管理が煩雑で、美術室での他学年の授業は絶対に避けたい。(というより物理的に無理!)しかもこの時期は教室ではクーラーが効くので、大抵の生徒は暑い美術室でのテンションがまるっきり下がります。

そこで、わざと「暑すぎる!私も教室で涼しく授業をしたい!」と、半ば強引に他学年の授業は教室で行う提案をし、またそれにあう題材を設定するのです。一方焼き物の授業の当該学年には暑いけどここで頑張れば夏休みに焼いてもらえるし、きっと夏休み明けに作品にご対面だと言い聞かせて授業をするのです。今やらねば、文化祭にも出せないのだ!…とも付け加えて。

ところが扇風機を回すと粘土がすぐに乾くので実際には扇風機も止めての作業となります。ほとんどの生徒がやり始めたら完成させるまで必死の作業となりますので、暑くても何故か文句もなく無風の美術室に耐えてくれます。

この題材のために、かなり前から教務の先生に相談して、2年生ながら2時間続きの授業設定とできるだけクラス間の空き時間をとってもらうことで、道具のケアや放課後補習の設定をしやすく工夫します。授業の度、補習の度の道具をケアが本当にバカになりません。

では、そのケアの内訳を紹介しましょう。

うちで使わせている道具は、

4人班の道具箱に、約20cmの5mm厚たたら板(8)、粘土用カッター(2)、切り糸(1)、かき出しべら(1)、木ぐし(1)、抜き型(ハート・楕円・丸型他数種)、切り針(1)、切り弓(1)、竹串(4)、ゴムベラ(1)、なめし革(2)、どべ(タッパー入り1)をセットしています。どれも細々とした小さい道具ばかりですが。

板づくり、手びねり(二つ割り)、ひもづくりに対応する道具となります。全市の作品展を見ると他校ではとても念入りに作られた精巧品が出品されるのですが、聞くと何週にも及ぶ制作期間を要しているとか。しかし、うちは二週、三週にまたがって授業はしません。というのも二週目に気に入らない部分が見つかるとすぐに作品をつぶしにかかる生徒が後を絶たず、授業でのねらいである加飾やかんな削りなどの仕上げの工程が成立しないことが十分予想されるのです。なので、仕上げ用の道具にはあまり厚みのない道具選定となっています。

さらに、各自に粘土板を使いますが、マーブルボードという再生粘土板が安く、扱いも簡単なので長年採用しています。以前、赴任してきた時に上等な板の粘土板があったのですが、忙しさにかまけて水洗いしたまま拭かずに雑然と重ねて置いてしまったら、気づいた時にはすでに遅く、反るわ隙間ができるわで何枚もダメにしてしまいました。予算的にも余裕のある学校ではありませんので、その補充のために高額の粘土板には手が出せませんでした。マーブルボードは若干小さいし、粘土による染まりもかなりありますが、手入れの楽さと値段の安さ、そして「再生品」というところが子どもたちにも紹介しやすく、即採用と相成りました。

また、板づくり用に用意している粘土のべ棒(のばし棒)は表面にキズがあると平らな面がつくれません。この棒、同じ長さだとすぐに太鼓のバチ代わりにして机の角に打ち付け、凹ませてしまう子どもが出てきます。なので、わざと長さを変えて班に2本ずつ渡します。転ばぬ先の杖かな。お陰で穴ぼこ被害は毎年若干少なめです。

粘土用サークルカッターは丸い土台づくりに便利なので昨年採用しました。コンパスで型紙を作らせるよりは柔軟で手軽です。ちょっと値が高いので昨年3セット、今年3セット追加して現在6セットあります。

毎年カタログを見ながら少しずつ道具の充実を図ってきたのですが、今年は切り弓となめし革を採用しました。今年の作品は「家で使える焼き物」をテーマにしましたので、皿・コップ・茶碗などが増えると考え、口あたりをなめらかにしたい生徒が増えるのではと考えました。また、いくら助言をしても板づくりにしたときなどにどうしても作品が粘土板にひっついて剥がれない!という生徒がいますので、今年はスケッパーを用意しました。以前は片栗粉なども置きましたが、ビニール袋の中でカビが生えるのが気になり、それは止めています。こちらの使用頻度は結構高かったので、あと2枚は欲しいかな。

さて子どもたちは4人班で係分担をして授業に取り組みますが、これがなかなか…。普段の授業や学校生活できっちり班活動をさせていれば慣れたものなのでしょうが、うちの学校の弱いところでしょうね。分担は道具材料を取りに来るときだけは機能しますが、後片付けともなると俄然厳しくなります。進度がバラバラな中での片付け指示の頃合いが難しい。結局、最後まで粘る生徒がいる班、横着者の集まりの班ともなると、整理して渡した道具箱に粘土付き道具が乱雑に放置されてしまいます。もちろん机の上も粘土だらけ。彼らには次の授業の始業チャイムという味方がついています。コントロールの利くクラスでも完璧な後片付けができる班は限られます。さすがに授業中に粘土を床に落とす例は少ないのですが、これが放課後の補習ともなるとメンバーによっては一気にロストコントロール状態に陥り、足下に粘土が落ち出します。

なので、授業後、空き時間をつくってもらい、また補習後にも時間を掛けて道具再セット。床や机もチェックして、次の授業・補習までにコンディションを整えます。少なくとも授業で初めて使用する時には粘土のこびりついた道具を絶対見せたくない。それが9班分のセッティングとなるので、繰り返しのケアを強いられるのです。

そんな苦労が絶えない題材だけれども、焼き物は本当に楽しい!

材料の粘土は固くなっても再生は簡単にできますし、つくりかたもバリエーションに富んでいて、しかもひんやりした触感や頻繁に水を使うところが夏題材として申し分ありません。実はもうかれこれ7~8回目。テーマは毎年少しずつ変えながら取り組んできました。昨年は「ランプシェード」、以前「焼き物オブジェ」という年もありました。これもおもしろい取り組みでした。

今年、1人の生徒が授業中、手びねりで進めてきた大きめの器がどんどん伸ばすものだからだんだん側面が薄くなり、しまいには穴があきました。しかもずっと土台を粘土板から外すことなく作業を続けていたので、最後には作品を剥がすこともままならず、100%納得できずに授業を終了しました。なのでその日の放課後に開いた補習に約束通りやってきました。彼はその日部活に行きたかったのですが、放課後も悶々としながら完全下校まで掛けて、似たような失敗を繰り返しました。挙げ句、キレて言いました。「粘土なんて大っ嫌い。ほんま腹が立つ。明日の補習は絶対来ないから!!」と。周りがどんどん作品を完成させて、満足げに帰っていくのがよほどうらやましかったんでしょう。誰に怒っているんだか、珍しく反抗的な態度で「もう来ない、もうやらない!」と捨て台詞を残して帰っていきました。

私はあとからその様子を担任に告げ、「一言励ましてやって」と添えました。担任の声かけがあったのかは分かりませんが、次の日の補習でペタっと私のとなりにひっついて作業を始める姿がありました。ぽつんと「○○君のようにツルッとした作品が作りたいんや。」といいます。「それなら板づくりでつくろう。」と提案しました。

見ていると彼は、粘土板の上でろくに粘土を練りもせず、また形を整えもせず、いきなりたたら板を渡してのべ棒を粘土の塊の端から思い切り押しつけていきます。どうしたら形よく円形の板ができるのかを全く想像していないようなのでした。私は「まず少しとってお団子をつくってごらん。」と指示し、「それを粘土板に手の平を使ってグッと平らに押しつける。」そして、「ここでたたら板の登場。」たたら板の間に丸い粘土の厚板が置かれたところで「のべ棒は真ん中から少しずつ広げて、同じ方向でばかり回転させると縦に伸びてしまうから粘土を剥がして置き換える」といい、きれいな丸い薄板ができていく様子を一緒に確認しました。「いい?これからサークルカッターで円に切っていくけど、もういっぺん粘土板から剥がして乾いた所に置き換えてね。」そして、「サークルカッターは粘土のど真ん中に合わせて置いて。」「どのくらいの大きさにできるかシミュレーションしてから切り針をグッと差して回転させる。」そういってやらせていくうちに、きれいな円形の粘土の板が粘土板の上にできたのを見て、彼ははじめて「おもしろい。」と微笑みました。

その様子を見て、「今日は来ないって言ってたやん。」と声を掛けました。すると「しょうがないやん、今日は塾もあるし、部活も中途半端になるし…。」とよく分からない返答が返ってきました。「昨日は反抗的やったよね。」すると「だって、粘土が思うようにならなかったから。」と。「こうしようと思ったらそうなるように準備したり、先を読んで行かなきゃ。それに分からないことがあったらさっきみたいに私に相談すればこうやってうまくいくように教えてやれるんだよ。」そういうと本人、どうやら納得したようでした。その後彼は最後になめし革で表面を前日とは比べようがないほど美しく磨いて作品を仕上げて帰りました。

授業ではなかなかこうしたやり取りは難しいですが、補習で任意の参加ともなるとゆったりと少人数の生徒の相談に応じたり、くだけた会話も弾みます。

こうして怒濤の4日間を費やした焼き物の題材がほぼ終了。若干名の生徒の補習を残すのみとなりました。

来週は美術部でのシルクスクリーンのTシャツ制作です。これがまたおもしろい!!
まだまだ、夏休みまでに一山ありますがあと一踏ん張りです。


本日「色彩指導者養成講座」のテキストが午前中に届くので何よりも楽しみ。
忙しかった私に「自分の時間」をしばし返してもらう予定です。