ロングロングワインディングロード

最近の授業から。久しぶりに授業のお話です。本職はこちらですから…(*^_^*)

これは1時間限定の単発教材。

小学生との出会いの授業で取り組んだいわゆる造形あそび的な内容です。
タイトルは表題の通り。語源はビートルズの‘The Long and Winding Road’。懐かしい曲ですね。

しかし、本タイトルは「ロングロングワインディングロード」。子どもたちに伝わりやすいネーミングです。

「長い、長ーい、くねくねした道」っていう意味だよ、と英単語を一つずつ訳していきます。
「ロードは道路」なんてのを2回繰り返すと子どもたちは必ず笑ってくれます。小学生はこういうの大好き。(出会いの授業では笑いを引き出すことでいち早く心を開かせます)

「曲がりくねったぁ~♪」といきなり歌うのもありです。もちろん『絢香×コブクロ』の『WINDING ROAD』 。出だしだけ本気で歌うのですが、授業者自身がオープンマインドで臨むことが授業成功の秘訣です。私たちの教科はいつでも作品を挟んで子どもたちと対話できるのですから、互いの固い自己紹介でスタートするよりも、楽しい時間を共有する方がよほど有意義です。

さて、この題材は中一の題材で切り絵で文字を破綻させない方法を効果的に伝えるには…と紙にアレコレ書いていたときにふと思いつきました。一筆書きで切り字(はさみで切り抜く文字)の線をさぐっていくような練習をしていて、おもしろさ、発展性を覚えました。

A4の紙と鉛筆さえあれば成立する単発題材。ねらいは明確です。

1集中力を高める(おもしろいから続けたくなる)
2線のよさ、おもしろさに気づく(ぎざぎざ、くねくね、ゆったり…)
3様々な形態の線から構成される造形をみつける(見立て、錯視、リズム、ムーブマン…)
4先読みしながら行為する自分に気づく(ゲームオーバー回避、動物かくれんぼ、文字の出現、…)

題材の要点(ルール説明)

1線が交わってはダメ。グルグル書きは線が交わる。道がループしないように。
2できるだけ長く続ける。交わりさえしなければOK。
3消しゴムで修正してもよい。むしろ何かおもしろいものができそうならどんどん修正していこう。

準備

「鉛筆はピンピンですか?まるくなっているとこの作業は続きませんよ。」こういって、細く長い線を引いていくことに実感を持たせます。この声かけは意外に重要で、あらかじめ準備しておくと途中で鉛筆を削りに席を立つ(口実も含め)子どもを最小限にとどめることができます。心理的にも準備をきちっとさせることで気構えがしっかりするように思います。

練習

紙の端っこで一度練習させてみる。

練習は課題理解のためにやった方がいいですね。というのも、紙全体に広い範囲で線を引いてしまうと続けられなくなりますし、蚊取り線香みたいな渦巻きは案外閉鎖性があって脱出できなくなることを一度経験すると学習できます。このとき時間を決めておくとより集中してくれます。30秒から1分というところでしょうか。その間、ざっとその様子を見ておき、「やり方がいろいろあっておもしろいね」と声かけをした上で、細かい作業をしている例を紹介しながら、迫り方のコツを学ばせます。

本番前に…

あえて、子どもたちに制限時間を訊ねます。そのときに練習時間が生きてきます。1分で端っこのこれだけか。それなら…と子どもたちの何人かは要求してくれます。集中できることを考えてあえて10分などとしておきます。とりあえず、こういいます。「一応10分やってみましょう。ただ、みんながもう少しほしいというならそのときに追加しますから、それまででゲームオーバーにならないようにしてください。」

「スタート!」

どのクラスでもスタートから少し時間が経つと、静まりかえった状態ができます。少々故あるいわくつきのクラスでも、T2(小学校では私がT1。ペアで授業をしています)の先生が感動するほど、紙と向き合って黙々と線を引く子どもたちです。

しばらくすると、アプローチの違いでどれも全く違う形態が現れてきます。本当に見事なほどそれぞれに違います。線の性質の違い、密度の違い、葉っぱや花、☆など何かの形を意識した物、迷路のような物…。そこで、周りの取り組みを見せて、触発されるモデルを探す場面を与えます。友達の取り組みは何よりもチャレンジ精神を産むものです。

頃合いは、臨機応変。ほとんどが集中しているときは水を差しますから、若干飽き気味の姿を見かけたらそのときです。

偵察・触発タイム

「みんながどんな風にやっているか気にならない?じゃあ、少しだけ見に行ってもいい時間をあげます。ちょっと疲れてきた人もいるでしょうから、手を止めて。見に行ってください。」だいぶ飽きてきた子どもたちは解放されて友達の所へ直行します。佳境に入った子どもは席を立ちません。こういう姿を見せるのも学びの機会です。

「○○君スゴイ!」「△△ちゃん、こんなん書いてる。」と必ず声が上がり、注目を集めます。だから続けて書いている子も一旦手を止めて友達の所に向かいます。

そしてまた自分の所に戻って続きをはじめる子どもが出てきて、大方席に着いてきたら、「じゃあ、続きをどんどんやっていこうか。」と言います。周りが集中しはじめるので、若干サボり気味の子も自然に戻ります。

静寂カウントダウン

出会いの授業ではできるだけ「禁止・注意」のメッセージは避けて進めます。指示が聞けないほどの私語があれば「3・2・1」で注目させ、しーんとさせてから真顔で大事な話をします。ちなみに授業のはじめに席に着いていないときは、前に立って、その人数を「あと○名」と言って気づかせたり、気づいて座るまでの動きを考慮して間隔を調整しながらカウントダウンしていきます。あまりガミガミ言わないで済むようにパターンを示すことで「その場の空気が読める」ように工夫しています。

さて、クラスにもよりますが、その時点で、すでに10分は経っています。なので、「おっと、みんなスゴイ集中だね。もう10分過ぎてしまったよ。ここで相談なんだけど、あと、何分欲しい?」結局2時間続きの授業だと残りの20分丸々使っても終わらない子どもが休憩時間も使って続けるので、うれしい悲鳴です。じゃあ、ということで「この時間いっぱい使ってもいいよ。ハイ。みんなには負けました。」そういって賞賛します。

新アプローチの提案

さらにもう手がないという子どもたちのために、「動物かくれんぼ」(線の形でウサギになったり猫になったり…)、一筆切り字(私のフルネームを筆文字のように量のある形に一筆で書きます)を黒板に書いて見せます。一筆切り字は最初はくねくねした線ですが、次第に文字らしきものが見えてきて、最後、始点に戻ると完全に文字が浮かび上がりますから、どのクラスも必ず感嘆の声を上げてくれます。

こうしてアプローチを変え、新しい紙を渡せば、残り時間どの子も続きができるようになります。

切り字に興味を抱く子どもたちは多いですね。依頼心が強いクラスでは「書いて、書いて。」で引っ張りだこですし、チャレンジャーが多いクラスでは「できた。見て見て。」と呼ばれます。そうこうしているうちに別のところではA4サイズながら大作が次々に生まれていきます。

いつでもどこでもできるお薦め題材です!

紙と鉛筆さえあれば、何だか楽しい時間が過ごせる…そんな経験をさせることができれば成功だと思っています。しかも子どもたちの性格や志向が随分垣間見られる題材でもあり、我ながら「ナイスアイデア!」と考えています。

本ブログをご覧の図工・美術関係の皆さんにも、是非一度お試しいただきたい短時間題材です。