調色体験

昨日、日本ペイント本社で色彩基礎セミナーが行われました。

そこで自動車用の塗料で調色を体験してきました。

静電気防止加工済みの白衣を着て、塗料の飛散防止のための防護眼鏡と溶剤をカットする防護マスクに、手術用のピッタリと手になじむゴム手袋という重装備で実習に臨みました。

まずは「調色」の概要説明。

要は、ある色を原色と白・黒の混色で再現すること、それが調色です。

これなら私も中学校でしょっちゅうやっています。学級旗や大型の看板づくりでは大量の絵の具がいるのですが、生徒は塗っている途中で絵の具が足りないのに気づくわけです。ところが自分でその色を再現できずにやってくる。私は無駄が大嫌いなので、最低限の絵の具の混色で再現してみせ、「おおっ、さすが!!」と言わせつつ、十分な量の絵の具を確保して生徒に渡すわけです。生徒には自分で再現することも教えなくてはなりませんから、ただ色を作ってやるだけでなく、混色する色数をできるだけ絞ってシンプルに混色するように助言を加えておきます。ということは、今回の実習はその経験値が生きてくるかも…ムフフ。

おっと、元に戻します。

調色とは、いくつかの原色と白と黒との調合で限りなく近い色を再現していくことですが、実は厄介なファクターが存在する極めて難しい世界でもあります。

その厄介ものとは「メタメリズム」です。

メタメリズムとは、2つの色に含まれる成分(原色)の違いが元で、光源が変わると同じ色に見えたり、違った色に見えたりする現象です。

原色が違えばその分光反射率(物体がもつ特性。各波長ごとの、光エネルギーの反射%は物体により異なります。)が変わります。ということは、光源の分光分布(光に含まれる波長成分ごとのエネルギー分布)の変化で、反射する波長成分が変わってきますから、一方が赤みを帯びたり、青みを帯びたりして2つの色は違って見えるのです。光源にしろ、反射率にしろ、結果相対的に長波長域成分が多くなると赤く、短波長域成分が多くなると青く色づいて見えます。

講師は黄色の試験紙を2枚重ね、D65(色を検査するときの標準の光)下で同じであることを確かめ、続いて照明環境の異なる2箇所で受講者にそれを比較させました。

そして言いました。ある場所で同じ色に見えるだけでは「調色」の意味がない。クライアントが持ち込む色(車の塗装補修だと考えるとイメージしやすいのではないでしょうか)に対して照明環境が変わってもメタメリズムを起こさないようにしなければならない。そのために私たちは同じ色みでも複数ある原色を一つ一つ調べて色出しをしていくわけです。と。

…ということは、調色とは「アイソメリズム」(分光反射率曲線も同じ色)=同色を求めていく技術だということか。原色を何度も変えて、複数の光源下で確かめて原色を突きつめていく作業が必要になります。これは厳しい。極めて複雑な作業です。

と考えているうちに二手に分かれていよいよ実習です。昨年も同じような実習があったそうで、その参加者や調色経験がある人達はエアガン(噴霧器)による塗装の実習を先行してされていました。

ともあれ、調色実習はメタメリズム回避といったシビアなものではありませんでした。自動車用のソリッドカラーの塗色。サンプル色が与えられ、原色は2色限定、それに白と黒の塗料を色の見えが同じになるように調合する作業ということで、D65光源下で行われました。(ホッ…)

カップにまずは一番たくさん含まれているであろう白を入れ、順次原色をスポイトで少しずつ滴下し、アルミの撹拌棒で混ぜていきます。

調色シートは3cm角の白とグレイのチェックの厚手光沢紙です。ソリッドカラー(いわゆるパールマイカとかメタリックなどの光輝材を含まないツヤのある塗料)を棒塗り(アルミ棒で平たく塗色する方法)していきます。すると塗料が不透明なので適当な厚みで塗ればグレイの面が隠蔽されます。なのでこの調色シートを隠蔽紙と呼ぶようです。

ここで若干問題なのは、濡れ色と乾燥後の色の違いです。絵の具の混色でも顕著に起こりますが、塗色面も一緒です。そこで、オーブンで1分以上強制乾燥しますが、乾燥すると白が沈み、若干濃く、鮮やかになる感じです。これを「色が上がる」と呼ぶそうです。昔使っていたポスターカラーだと白が立ってくる印象がありますがあれは勘違いだったのかしら。それともこれは塗料の特性かしら。残念ながらこれは聞かずじまいでした。

さて、そうして出来上がった塗色面とサンプルを視感比色し、足りない色をスポイトで垂らして同じ作業を繰り返していきます。

いつも頭によぎること、それは、生徒とのやり取りだったらすぐにでもクリアされるだろうということです。生徒なら間違いなくOKがでるだろう近似色は2、3回の試行で上がりました。でも、色差がほとんどない状態まで持って行くにはああでもない、こうでもないと結局一つ目のサンプルに調色のプロ(講師の先生)からOKがでるまでに20回の試行錯誤を要しました。2つ目のサンプルでも13回。帰宅して家庭用の蛍光灯下ではほとんど違いの見つからないような試行を含めて相当悪戦苦闘したものです。

これも、有彩色の原色がたった2つの調色でそんな状態なのですから、同じ色相の原色が数種類ある中での調色がいかに困難か推して知るべしですよね。

実習後の質疑応答でのお話によると、調色師(士)の育成には現在半年かけるそうです。それも色の分かる人が側についてしなければなかなかうまくいかないとのこと。昔は調色3年といわれたそうで、熟練の経験がものをいう世界であることは間違いありません。

実習でなるほどと気づいたことですが、まずは台の上をクラフト紙でカバーし、マスキングテープで四方を止めていました。これなら容器を倒しても(実際数例ありました)汚れる心配もありませんし、作業台も平坦で作業しやすく安心です。また、黒は他の色と違い10倍に薄めてありました。これなら微量でも強い影響を与える色の微調整が可能です。また顔にがっつりと食い込むマスクも塗料に含まれる溶剤を一切気にすることなく数時間の作業に耐えられました。乾燥しきれていない隠蔽紙を手提げバッグに入れて持ち帰ったのですが、2日目にバッグを提げたときの匂いがかえって気になるほどでした。

それにしても、今回の調色の精度はかなりのものだったと思います。ヘタをすると199シリーズのカラーカードのロット差の方が大きいのではと思えるほどの違いです。

貴重な体験をすることができました。感謝!!
by my-colorM | 2008-03-22 10:00 | 色の話