カラーウォッチング-色彩のすべて

小学館から出ている「カラーウォッチング-色彩のすべて」は1982年発行の色の決定版だが、これは1980年イギリスで発行された「COLOUR」の日本語版である。

どのページを捲っても新鮮な驚きがある。美しい図版と解説に目を奪われる。決して古くない。

と、書評を話題にしようとしてはじめたのに、ふと開いたページに月曜日に中2を対象に展開しようとしている色材の変遷について書かれている。
目にとまったので自分のメモ代わりに記しておく。

ティツィアーノはルネサンス期ヴェネツィア派の画家であるが、その作品の洗浄修復の話題が載っている。1525年に描かれたその油彩画に幾重にも重ねられた黄褐色のニスの下から美しい色彩が洗い出された。そのことから彼がカンバスに赤褐色の地色を用いていたという説や、陰鬱な色調の大家という画家に対する見方は大幅に訂正されることになる。

分厚い黄褐色のニスを引くことはテンペラ画以来当時の絵画に施されてきた手法であり、顔料をカンバスに定着させ、水の心配から作品を守る方法としてなされてきた処置だが、油彩画が一般的になってもその表面に赤褐色のニスが厚く塗られてきたのである。

テンペラ画の乾きにくいニスに代わり、顔料に混ぜる速乾性の油がヤン・ファン・アイクにより発見された。光沢があり色を鮮やかにするその油が見つけ出され油彩画へと徐々に取って代わってもその当時の画家たちは伝統的な脂色の画面をあえて選んでいたのだという。

色彩の画家としてその洗い出された美しい作品によって、後世の人々から再評価をされることになったティツィアーノもその一人ということなのだろう。

少しさかのぼってレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」における彼らしい失敗については以前のブログを読んでいただくとして、顔料をいかに画面に定着させていくかという画家たちの苦労についてはフレスコ画→テンペラ画→油彩画→チューブ入り油絵の具の発明という画材の変遷をたどりながら生徒たちに解説を加えていこうと考えている。


さて、「カラーウォッチング-色彩のすべて」は今や絶版であり、求める場合はユーズドに頼る他はない。しかし、定価よりもかなり高いのが名著の証である。コンディションのいい物には3倍近い値が付いている。

しかし、カラーに関心があるのであれば手に入るのなら手元に置いておきたい一冊である。
by my-colorM | 2007-02-03 23:24 | 色の話