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思わず見てしまいました

今朝はたまたまだったのですが、2つも続けて感動のTV番組を視聴しました。

一つ目はNHK総合で「青海チベット鉄道・世界の尾根2000キロをゆく」。そして2つ目はNHK教育テレビで「第75回日本音楽コンクール・若き音楽家たちの肖像」です。

どちらも再放送でしたからすでにご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんね。





西寧~ラサ間全長約2000キロ、世界一高い海抜5072mの峠越え、標高4000mを越える区間が1000キロという鉄道を約26時間かけて列車が走り抜けていく。ひたすら青い空と山並み、白い大平原を見ながら、しかも気圧も低く、酸素が薄い高地を航空機技術による高山病対策のとられた車内で過ごす…。

日本の列車の旅はどこを走っていても人の営みが必ず目に入るものですが、青海チベット鉄道では見たことのない壮大なパノラマにきっと世界観が変わるかもしれません。

構想50年、永久凍土への鉄道建設技術の研究、そして着工。長大な走行距離と険しい山々、砂漠、高地への建設工事。また、野生動物保護を含め徹底した自然環境保護対策の発想もなくてはなりません。そうしたもろもろを考えても人間の挑戦という点で目を見張るものがありました。それにしても世界一高いところを掘削したトンネル建設の過酷さは酸素ボンベを背負っている作業員の写真でうかがい知ることができました。

ところで、終点のラサにはチベット仏教の頂点ダライ・ラマ法王がかつて住居としたポタラ宮殿があります。
以前紹介したことがある写真集「地球巡礼」に衝撃的に登場する、巡礼地に赴く信徒たちの宗教的な行い“五体投地”を鉄道沿線の国道で繰り広げる巡礼の民の姿が映し出されていました。

“五体投地”は仏門への帰依の証、絶対服従を意味する行いとして、ごつごつした岩の上も、砂利道であっても、まさに身を投げ出しボロボロ、ドロドロになりながら尺取り虫のように地を這いつくばり、何日も何日もかけて聖地に向かうという、とても私などには受け入れがたく想像を絶する過酷な業です。ある意味で、信仰がなせる純粋なひたむきさを感じずにはいられません。

一方、巡礼に訪れるのがラサに向かう目的だというチベット民族の家族にカメラを向けていました。終点のラサに降り立ち、ポタラ宮殿を前にしておもむろにその場にひれ伏し五体投地を始める姿も捉えていました。綺麗に整った衣服が前者のそれと対照的に映し出され、持てる者と持たざる者との格差としてとらえる図式を意識しないわけにはいかなかったのは私だけでしょうか。それとも昔ながらの信仰の形と今のそれとの違いととらえるべきものなのでしょうか。

また、番組では商売を展開すべく市場調査に赴く経営者たちと、メノウや珊瑚などの宝飾品をありったけ持てるだけ持って行商する若者たちのグループも紹介されていました。鉄道からもたらされる経済効果。それは道路を行き交うトラックで運ばれるそれをはるかに越えているでしょう。チベットの貧しい遊牧民たちの町が大きなショッピングモールを抱えた一大観光都市として姿を変えていくのにはさほど時間はかからないかもしれません。素朴で信仰心の厚い遊牧の民が自ら観光資源としてその民族衣装をまとい、スーパーマーケットで都会から流入する様々な製品を買い求めているなんて姿はあまり想像したくはありません。これも私の身勝手な考えでしょうか。「幸福追求」「豊かさとは何か」というテーマで考えたときに、これでいいのかしらと立ち止まってしまいます。

あとでネット検索をして調べてみました。美しい自然のパノラマを満喫する列車旅。試運転期間を終え、今年の4、5月には豪華観光列車を導入する見込みとか…。コンパートメントで1ベッド1日1人1000ドルといいます。試運転期間中はとにかく何かあったら列車を止める、4000mを越える高地部分では100キロ走行とか万全の安全対策をとっているとしていますが、何しろ単線で、永久凍土という不安定な地面に練りに練られた研究の結果着工したとはいえ、地球温暖化もそうですし、鉄橋部分の強風や高地の厳しい自然環境もまだまだ未知のトラブルも考えられます。万が一事故が発生しても全く人家もない、つまり電気もない、何もないところに停車せざるを得ないとすれば…。

壮大な自然景観を何よりも愛し、そのためならどんな苦難も排除できるという自信が私には残念ながらありません。TVで見て、たしかに感動もしましたしそれなりに満足もさせていただきました。でもいざ自分がということになると??

いろいろと考えさせられる番組でもありました。


次に見た「若き音楽家たちの肖像」では、予選を通過し本選に臨んだ一人一人の参加者の演奏の様子はもちろん、事前事後の表情に密着しながら結果発表とインタビューという構成でした。

このときにかける音楽家たちの真摯な姿や緊張感、演奏が終わって見せる安堵と反省そして今後に対する意気込み…。どの表情を見ても心が打たれました。

ついつい関西の音楽家に注目して見てしまいました。

まずは作曲部門第1位に輝いた京都市立芸術大学大学院在籍中の山根明季子さんの「水玉コレクション」は様々な水玉模様が織りなす色彩感あふれる交響楽が印象的でした。

また最後には笑みまで浮かべながら素晴らしい演奏をしたバイオリン部門の黒川侑さんは非の打ち所がありませんでした。美しいの一言。終了直後オケのメンバーがとても満足げに笑顔で拍手を送っていたのも演奏を聴けば、さもありなんという感想です。堂々の1位でした。

そしてピアノ部門第1位の市立芸大四年在籍の河内仁志さんのラフマニノフ「ピアノ協奏曲第1番」も彼が事前のインタビューで課題視していた三楽章の流麗な指裁きが圧巻でした。ピアノ部門は三回も予選があったそうですが、その頂点に立つためにはよほどの才能と努力とそして優れた先生方との出会いに恵まれたのだろうと思います。

音楽を楽しみ、奏でる。そして1位になった人がインタビューされて共通して感謝の思いを表しているのがとても印象的でした。一人の才能や努力ではなく、様々な支えがあってピラミッドの頂点に立っているのだということに彼らは競い合う中で自然と気づいていくのかもしれません。


さて明日からは忙しい仕事の毎日が待っています。

今日はいい番組に巡り会えました。明日へのエネルギーを得たような気がします。
by my-colorM | 2007-01-08 18:12 | 日記 | Trackback | Comments(2)
Commented by あおやぎ at 2007-01-10 10:20 x
はじめまして。
私は昔ラサをたずねたことがあります。そのときは、もちろん鉄道ではなくてバスでした。なので、とうとう鉄道ができたかという思いと、町の変わりように驚きながら観ました。文明は、ありとあらゆる手段を使って、「秘境」と呼ばれた土地に進入してきますね。ただ、チベット人にとって、それが幸せなのかどうなのか、正直私にはわかりません。いろいろと、考えさせる番組であったと思います。
Commented by my-colorM at 2007-01-10 23:28
あおやぎさん、はじめまして。コメントをいただきましてありがとうございます。

そうなんです。現地のチベット人にとって幸せなのかどうか…。豊かさをもたらすであろうことは想像できますし、豊かになることになんら反対をするものではありません。でも民族の中で長い年月育まれ保たれていたであろう価値観や秩序が外から急激に押し寄せてくる経済活動にどんどん破壊されるのではないかという危惧を覚える…。私はTV画面で美しい風景を目にする一方でそんな見方をしていました。

ところで、あおやぎさんのお写真ステキですね。またゆっくり拝見させて頂きます。