ムカゴご飯の味…

遠く離れた肉親の安否って…。
携帯電話を持つ時代。
簡単に知ることができるはず。

私ホントうかつでした。信じられへんほどおバカでした。
父にめっちゃ叱られた。
息子の前で叱られちゃった。
私の前にも肉親が生きるか死ぬかの状況があったのに、

…知・ら・な・か・っ・た…!

幸い、3日前に無事退院となったのですが…。


ことの顛末。


8月の末に母から電話をもらっていたのをすっかり忘れていた。
「おじいちゃん(父)が膵炎が見つかったらしくて検査入院した…」
今思えばそう確かにそう言っていた…。



先週、カラコの対策講座の前々日、
「お父さんが今入院している。だいぶ怒っている。」


という電話口の母の話…。


「えっ?入院?何のこと?何で入院してるの?」
クエスチョンマークが頭を駆けめぐり、
8月の電話のことが思い出されないまま混乱しまくった。

9月4日のAFT講師養成講座の最終試験に提出用レポート作成、
そのうち学校が体育祭、文化祭と忙しくなって、
さらに定期テスト、研究会の仕事…、
ようやく東商に取りかかり対策講座もという多忙な毎日が重なって、
すっかり実家と連絡を取ることができず、
父のことをすっかり失念していた。


「怒ってる?何故。」
「そんなに悪かったのに、実家も今になって連絡してくるの?何故。」
いよいよ納得いかないけれど、とにかく行かなきゃ。
行くとなれば息子も連れて行って慰めなければ…。
息子はもう3年も実家を訪ねていない。

そんなわけで先週の土日にやっと静岡へ、
そして入院先に顔を出すことができた。

病院に着くと、下の兄(これが湖西に住んでいるのに、
8月から伊豆に転勤単身赴任中とその時はじめて聞かされた)が
玄関先で出迎えてくれた。

「覚悟していけ、俺もだいぶ言われたところ…。怒ってるぞ。」と。
電話口もさることながらここでもか?何故?


病室に向かい、ドアを押すと父の後ろ姿。夕食後の薬を一人飲んでいる。

「どんだけ苦労してお前らを学校にやらせたと思ってる。」
一瞥してはじめの一言。
「知らないとはどういうことだ。」「3ヶ月も放っておくとは…。」
「よそはみんな土日にどんだけ遠くても見舞いにきてる、
俺はそんな冷たい人間にお前たちを育てたのか。」
「親が死なないものだと思っているのか。」…ため息混じりのつぶやき、
ボヤキがはっきりと形をなした。

その時息子も側にいたが、兄が気を利かせて連れ出した。

2人になったところで、病状の推移を事細かに報告する父。
管を通して胆汁を出す…一時は苦しくて切なくて、
心細い思いを何度もした…と一言一言が状況を伝えた。

『心の底から会いたかった』その思いが口をついて叱責に変わる。
「知らなかった」ではなく、「知ろうとしなかった」のだと父は譲らない。

兄の単身赴任もさっきエレベーターで聞かされて知るほどの疎遠…。
父が危惧しているのはまさにそのことにほかならない。

ひとしきり恨み言をいっていたが、今週にも退院だと告げるころには
紅潮した顔が怒っているからだけではなく、
退院が近く顔色がよくなっているからなんだと
私にも分かるころには、少し頬がゆるみ、いつもの笑顔が見えだした。

「ばあば(母)も家で待っているから、早く行ってやりなさい。」と。
もう、あとは何も言うことはない。
再び入室した息子に「よく来てくれたな。元気そうだ。勉強がんばれや。」
そういうと、ベッドにゆっくり横になった。

家に帰り、怒られたこと、どう怒られたかを母に報告する。
認知症の母は今日はなんだかすこぶる調子が良さそうだ。
ただ、息子が何年生になったのかとうんざりするほどたずねたが…。

下の兄は「心配させまいと離れている兄弟に伏せておいてくれたんだから」と
兄貴をかばった。「それも心遣いなんだ」と。
「単身赴任をしているなんてこともはじめて知ったんだけど…。
この音信不通が心配なんだって、父さんは。」下の兄にちょっぴりかみついた。
その後、下の兄は息子と遅くまでギターに興じ、
久々の再会をつかの間楽しんで晩遅くに伊豆へ。

次の朝、病院に行くと、先生が巡回にきた。
上の兄と私、息子と小4の姪。4人がベッドを囲んでいる様子を見て一言。
「間に合いましたね。」
痛烈なその言葉に苦笑して目配せする大人たちの中に息子も加わっていた。

もう一度くると約束して病室を出たが、
その約束は父の一時帰宅により果たされなかった。
リビングで父のいないソファは淋しいと感じながら、
カラコのテキストに目を落としたとき、
突然父の声。
「ムカゴごはんを食べさせてやる」と明るい一言とともに笑顔で入ってきた。
えっ?お父さん?何故?ムカゴって何?
今度のクエスチョンマークは踊り出していた。
「俺は5時までに帰ればいいから。」と昼過ぎからいそいそと買い物へ行く父。

長いこと入院してきた父をようやく見舞う娘と孫に
ご馳走したいと思う父親の気持ちって…?




ハイ。
おバカな娘はそのムカゴご飯を無茶苦茶おいしくいただき、
実家に帰るたびにいただく、新鮮な鰹の刺身をまたもやほおばり、
完全に癒やされて京都に戻ったのでした。
「なんだか、ゆっくりしたな。」息子の一言に大きく頷きながら、
ムカゴご飯の味を思い出しつつ…。


こうして私はきっとこれからも脳天気に暮らしていくのだろうと思います。
どうしようもないですね。


あっ、色の話。

私の父は結構おしゃれなのですが、ブランドの茶色のコートを買ったそうで。
お昼の腹ごなしに散歩に行くことになって、
温暖な静岡をイメージして薄着だった息子が
そのコートを羽織って出かけました。
同じ茶なんですが、襟の部分だけ素材が違うのですね。
素材を変えることで変化をもたらす好例です。なんか魅力的、それだけで。
すっかり気に入って、父にアピールする息子に
もう数センチ背が伸びたら格好がつくだろう。そうしたらくれてやると…。

そんなこんな、退院した父から昨晩電話がありました。
「あのコート若向けだからくれてやる。送るから…。」と。

お正月、家族3人で実家に帰省することを約束したのは言うまでもありません。
by my-colorM | 2005-11-27 02:02 | 日記