エキサイティング東京…Part1

東京から戻りました。

帰りは比較的快適な夜行バスのはずとやや高額な便を利用したのですが、思いもよらずボッコンボコボコ…という、とんでもない周期的な振動に見舞われ、ほとんど眠れないまま帰京。自宅にたどり着いてから、そのまま一日朝寝・昼寝…ようやく復活して参りました。

帰路の若干のトラブルはさておき、2日間の東京見聞は大変エキサイティングでした。現地で時間をつくってくださり、最後までお付き合いくださったうさみさん、まどねこさん、そしてMiyabiさんにはスペシャルサンクス!!です。本当にありがとうございました。

今回から数回にわたりその旅先のレポートをしていこうと思います。

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日本の美術館・博物館鑑賞の特徴として、人気の特別展には観客が集中して混雑に見舞われるという困難がつきまといます。閑散とした常設展示に比べなんとも落ち着かない鑑賞形態。数珠繋ぎになってしまう上に人の影でまともに見られないなんてこともしばしばなんですよね。

混雑を極力避けるには、開館時を狙うのが定石です。

さて開館に並ぶまではまだ時間はたっぷり。
東京駅に着いたのは7:05。身支度を整えてからまずは動いてみることにします。
「るるぶMAP東京」の地図を見て確認しながら位置関係と方向を見極めます。

どうやら近隣のビル群のショップはほとんど開店していない様子。再び東京駅に向かうと帰りのJRバスの発着ターミナルを発見。帰りの出発場所のあたりをつけて中に入ると到着客にうれしいドリンクコーナーや軽食のお店が開いています。早速おにぎりのお店で朝食をとることにしました。このところおなかの調子がよくなく食欲もイマイチ…で小食気味でしたが、長い一日のエネルギーはしっかり確保しなくてはというわけでお味噌汁とちょっぴりのお惣菜それに辛子高菜のおにぎり1つ、それでもこれで勘弁してという感じで朝食終了。

いざ、地下鉄銀座線をめざして歩き出しました。この旅では東京メトロに乗ることも目標?の一つ。まずはそのメトロの駅で一日乗車券を購入し、荷物をホテル近くのコインロッカーに預けようと考えました。

銀座線へは地下通路でしばらく↑を道しるべに進んでいきました。一旦地上に上がってしまうとすぐにでも迷子になりそうでしたが、大通りに出てようやくメトロのマークを見つけ、早速乗車券を購入。ホテルに近い上野広小路駅に向け、乗車しました。

到着した駅の構内にコインロッカーは見当たらず、結局ホテルの場所の確認を兼ねて、直接ホテルのクロークに預けることにしました。駅から1分。すぐに見つかりました。泊り客がロビー脇のコーナーで朝食をとっています。明日の自分の姿を思い描きながら、スムーズに荷物を預けるとまた駅に取って返しますが、角にコンビニを見つけたので、前売り鑑賞券が手に入るか尋ねてみました。チケットぴあは10時からということで、発券してもらえないことがわかれば、もう現地で並ぶしかありません。少し歩くには距離もありますのでタクシーに乗り国立博物館を目指しました。

9:00前。あと30分ほどで開館ですが、すでに30人ぐらいが券売機のシャッター前に、10人ほどが門の前に並んでいます。

開館の時間が来るとすでに門の前は相当数の人だかりになってしまいました。

券売窓口の前で購入の順番を待つ間に、前売りの客がどんどん入場していきます。余裕の鑑賞とはすでにほど遠い状況です。

いよいよ入場。一人で鑑賞するときは大抵音声ガイドを求めることにしています。
今回は若冲の作品に注目していましたので、はじめの第一章「江戸の正統派絵画」はほとんどスルー。第二章「京の画家」で亀岡規礼の「猛虎図」には見入りました。しかしお目当ての若冲が次に展示されていると思うとやっぱり気持ちがはやります。

若冲の作品の多くは第三章「エキセントリック」に登場しますが、エキセントリックとは「ひどく風変わりなさま。奇矯(ききょう)。」…というわけで、若冲がいかに同時代の画家たちと比べ一線を画していたかが一つのテーマともなっていて、ここはいわば若冲部屋といった趣の展示です。

そこでもっとも風変わりだったのが「鳥獣花木図屏風」です。

これは若冲の他の作品に比べても相当印象の異なる風変わりな作品であり、その描き方は枡目描きと称するもので、同じ技法をつかった作品で静岡県立美術館の所蔵品である「樹花鳥獣図屏風」の解説をご覧になるとわかりやすいだろうと思います。若冲の枡目描きは一節によると京都の西陣織りの枡目型紙に由来するそうですが、丹念に方眼を3段階ぐらいの色の調子で彩色しています。モザイク画といってもさほど簡単な彩色ではありません。画面からタイル様の凹凸と感じとれるような色彩の使い分けをし、しかも一コマ一コマ一様でなく、色面の分量を微妙に調整した苦心作といえます。この作品をプライスさんのお宅ではタイルに再現して焼き、お風呂の壁にして楽しんでいらっしゃるとか。確かに銭湯のタイル装飾のような作品ではあります。この作品が本当に若冲の作品であるかについては異論を唱える方もいらっしゃるとか。他の作品に比べて緊張感が伝わってこないのも言われてみれば確かにそうだし、「樹花~」を見るとなおさら甘さが感じられるのだけれども、真偽の程はともかくとして、とりあえず、江戸時代にこのような表現をしていた画家が存在したのか!!といった驚きの眼でじっくりと拝見させていただきました。

若冲の作品の中でわたしのお気に入りは3つ。鯉魚図紫陽花双鶏図鷲図です。どの作品にも共通するのがアグレッシブな目。妥協を許さない、揺るぎないそのまなざしが大変な緊張感を画面に与え見るものを圧倒します。描くという時、この目がほんの少しでもずれると全く生気のないものになってしまいます。
こちらは椿椿山の「鯉図」こちらのウロコの表現はピカ一ですが、目の表現については若冲に軍配!です。

おっと、こんなペースで書いていたら膨大な記事になってしまいます。

では今回の展覧会で驚いた展示方法に言及しましょう。

今回の展示の中で最大の驚きは第五章「江戸琳派」の展示方法にあります。

「日本美術を鑑賞する際、光の果たす役割は非常に重要である。」

として「特別展示(光と絵画の表情)」では舞台で用いられる照明装置を使い、「自然光のように変化し、作品に表情を与える陰影ある光」の効果をねらった展示がなされていたのです。

しかもガラス越しではなく、屏風は立てかけられ、光が織りなす陰影で、別の展示室で見たフラットな印象とは全く別物でした。なにやらほの暗い展示室に思わず立ち止まり作品の前に立つ。と、弱い光が揺らぐようにして徐々にその明るさを増していく。すると画面があたかも障子越しに朝日が射したように白々と輝きを放ちはじめ得も言われぬ美しい姿を表す…。そしてまた夕暮れのような影の中で金色はくすみ、色合いはますますその濃さを増すがやがてうらぶれていく…。夜明け・朝・昼・夕暮れと光の様相が変わるにつけ、作品がその表情を確かに変えていきます。

このセクションで私は1時間ほど過ごすことになりました。一点一点が大変見応えのあるものでしたし、その変化をこの眼に留めようとするなら、立ち止まらざるを得ないわけです。

その作品の中で私の心にしみたのは鈴木基一の「柳に白鷺図屏風」です。朝日のような光の中で白鷺は悠然と舞い上がり飛び立っていくようでした。また、礒田湖龍斎の「雪中美人図」はフラットな照明下ではその微妙な趣はおそらく気づかれないのではないでしょうか。同じ白色が光の変化の中で浮き上がり、沈みしてその解釈を違えさせています。

全てを取り上げるのでは余りにも冗長。従って本展のレポートはここまでにしておきたいと思います。
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さて、企画展「親と子のギャラリープライスコレクション 若冲と江戸絵画-あなたならどう見る? ジャパニーズ・アート-が本当におもしろい企画でした。ただ順番にお行儀よく絵を観ていくというのではなく、絵の中に入り込んで楽しみ、親しむことを前面にあそび満載で、敷居の高そうな江戸絵画をグッと引き寄せようというコンセプトが意欲的でした。しかも本物の屏風絵・掛け軸を相手にということですからビックリです。

注目した展示物の中に、岩絵の具の標本がありました。岩絵の具。まさに岩石ですが、アズライトとかマラカイト…天然石とそれを砕いた顔料絵の具の標本です。思わずコレ欲しい~!と見とれてしまいました。写真に撮れないのが残念です。色彩の教科書に図版として是非載せて欲しい極上の逸品でした。

全てを見終わり、休憩にとどっかりイスに腰掛け、気がつくとすでに12時を回りかけていました。まだ予定の半分も達成できていません。エキサイティング東京を少しずつ実感しながらいざ心は「岡本太郎」へと切り替わっていきました。
by my-colorM | 2006-08-20 20:03 | 日記