忘れえぬ名画…青春の日の一枚
その中でももっとも再会の喜びを感じたのはロシアのクラムスコイの「見知らぬ女」です。
たしか高校3年生の夏です。私は東京まで「トレチャコフ美術館展」を観にいきました。
その前年、富士美術館に美術部の有志とで「ロシア移動派絵画展」(??う~ん、詳しくは覚えていません)を観て、そのリアリティに圧倒され、レーピンこそが私のもっとも尊敬する画家だ!!と、開眼したのですが(今は別ですけど…)、入試を前に、そのレーピンも来るというので、件の展覧会にぜひとも足を運ばねばと思い、東京まで行ったのです。
でもその展覧会で私を釘付けにしたのはレーピンではありませんでした。
それはクラムスコイの「忘れえぬ人」だったのです。
大塚国際美術館で撮影 ロシア クラムスコイ「見知らぬ女」 (角度が…)
物憂げに馬車の上から見下ろす黒尽くめの女性。黒い帽子をかぶり、白い顔に頬はバラ色をしていて、誇り高い端正な顔立ち。微笑むことはなくそのまなざしだけが印象的で…。題名は「忘れえぬ人」。私はその女性のまなざしを受けながらしばらく立ちすくんでしまいました。
そのときの、心が奪われるような、グッと引き込まれる感覚はいまだに忘れられません。
私は女です。この文面から(?)時として男性と間違えられるのですが、れっきとした高3の息子を持つ母親です。ですが、これまでで一番衝撃的な印象を私に与えたのが「忘れえぬ人」なのです。
大塚国際美術館で、レーピンの「ヴォルガの船曳」が目に入ったとき、なぜか期待しました。そしてその直後、二段展示の上の段にあの「忘れえぬ人」があったのです。私にとっては必然でしたが…。
再会。
震えるような感覚。また逢えた喜びが胸にこみ上げてきました。
解説の題名はクラムスコイ「見知らぬ女」とありました。
いやいや、「忘れえぬ人」だってば!!
そう問いただしながら、美しいそのまなざしにまたまた見とれてしまったのです。
大塚国際美術館にまた行きたいと思うのは、勿論実物大の作品に接することができるというのもありますが、青春時代の心をとらえたあの作品がそこにあるからかもしれません。