199カラーカードにない金・銀はどう表すの?

ある方から質問をいただきました。

これは色を勉強されている方からもよく出てきがちな質問でしょうし、
実は子どもたちからも時々質問されるのです。

今回は、色を勉強されている方からのご質問を取り上げてみます。

「金と銀が表現したいのにカラーカードに金と銀がないんです。
その場合どうやって表現すれば良いのですか??」

というご質問です。

表現したいという部分に解釈が必要ということで、私なりに次のように整理してみました。

1)金と銀をカラーカードの近似色で代用して表現するには?
2)カラー提案をするときには?
3)試験で金・銀が出たら?


そもそも、「金」・「銀」はJIS規格「物体色の色名」269色にも入っています。
すなわち、2つとも銅族元素のひとつで、
単体は金が黄金色、銀が白色の光沢がある貴金属の金・銀のような色をいいます。

一方「カラーカード199」は色研のPCCSハーモニックカラーチャート201系に準じて作られており、
色彩検定で指定されている199シリーズは光沢色がないのが特徴となっています。
ということは、そのままでは「金・銀」は表しようがないということですよね。

実際、産業界や印刷界では金・銀のような光沢色をどのように実現しているのでしょう。

例を挙げると、アルミ粒子を混ぜたメタリックカラー、
雲母薄片を原料として周囲に二酸化チタンや酸化鉄をかぶせた光輝材を混ぜた「パール顔料」などを
それぞれの目的にあわせて使っています。
自動車の塗料やパッケージの金・銀などがそれですよね。
製品や商品に高級なイメージを与えるためには必須の色彩ですから多用されるということになります。





さて、それではカラーカードにない色をどう表現するかという件のご質問にお答えします。

まず1)の近似色による代用について。

カラーカードを代用するとすれば、もっとも近似色といえば、金がd8、銀はGy-6.5と考えられます。
金属の特徴は光輝・光沢ですよね。そこでそれぞれ光が反射する部分はそれぞれb8・v8あたりとW、
影色はdk8あたりとGy-3.5あたりを使ってみましょう。
webデザインでは簡単にグラデーション表現が出来ますし、
彩色表現であってもここに示したカラーカードに近い色を作って陰影表現を含めて彩色すれば
金・銀の表現が可能ですよね。

さて、江戸時代の絵師、尾形光琳をご存知でしょうか?
彼の有名な作品のひとつに「紅梅白梅図屏風」というのがありますが、
近年の赤外線撮影による調査でこれまで金箔が貼られていたものと考えられていた作品が
実は巧みな彼の彩色によるものとわかったそうです。
すなわち下塗りに黄色の顔料「刈安」を施し、上塗りの陰影によって、
あたかも金箔が貼られているかのように見る者をだまし絵の世界に引き込んでいたというわけです。

このように別色で代用することが出来るわけで、古今東西の絵画作品を見てみるのも参考にもなり、
おもしろいですし、身近な例ではグラビア写真の金銀はなにもパール顔料など使っていません。
陰影を写しだしているに過ぎないことがわかると思います。
まずはいろいろと見てみることから答えを探してみてはいかがでしょうか。

つづいて2)カラー提案の場合について。

カラー提案で金・銀を使いたい場合は、イメージがぶれないように
素材色を使い、そのまま提案したほうがいいでしょう。
産業界の色見本はPCCSのカラーカードよりもはるかに色数も多く、光沢色はもちろん、素材も多様です。
PCCSは基礎学習用のカラーカードです。現場ではほとんど採用されていないと思って間違いありません。

3)試験で出題された場合について。

カラーカードを使って試験をする場合は、もともと同じ色のカラーカードがない色を近似色で表すという制限がつきものですから、「許容範囲」というものがあります。
トーンのずれ、色相のずれが多少は許されるのです。
たとえば金にしても色みの違うものもありますよね。私が1)で示したものは色相番号は8を使いましたが、
6の橙にぶれた金もありなのです。実際銅に近い色の金もありますもの。
だから安心して近似色をお選びください。

ただ、試験では解釈が大きく分かれるような出題はまずないと考えたほうがいいでしょうね。

PCCSはあくまでも色彩調和を求めるために限られた色数で構成された表色系です。色彩を学ぶ教育用の色彩体系ということで、美術教育・色彩教育・デザイン教育では欠かせないアイテムなのです。


さてここからは余談ですが、PCCSは色票集の体裁をとりつつも
色見本帳としての役割を担っているわけではないというお話をしようと思います。

2)の回答を少し発展させて見ましょう。

学術的な表色系に基づく色票類で代表的なものには、マンセル、JIS、オストワルト、NCS、PCCS、JBCC,
JCC40、CCICがあり、色彩検定や東商カラーコーディネーター試験に登場します。

それに対して産業界で、色見本として使われるものとしては、東洋インキ、大日本インキが刊行している
1000以上の色票を数分冊にまとめた「カラーファインダー」「カラーガイド」があります。
これらは一般的な色のほかに、蛍光色、パール色、メタリック色なども含み、また、白抜き文字、墨文字、
シルバー文字を重ねた場合の読みやすさが一目でわかるようになっているなど
実務に即した色見本帳ということが出来るでしょう。

また、アメリカの色票メーカーPANTONE社の「パントンカラー」にも十数種の多様な見本帳があり、
その中にはメタリックカラー(金属光沢色)204色の見本帳や、フィルム・メタルフォイルに109色を
透明または不透明処理で印刷したものまであります。

日本の業界では「日本塗料工業会(日塗工)」が「塗料用標準色見本帳」や自動車新色見本帳として
「オートカラー」を発行年を明記して出しています。

その他、印刷用にカラーチャート式とカラーファインダー式の2種類のプロセスカラー(M・Y・C・K)色見本帳や
グラフィックデザインやパッケージで多用される金、銀、パール、メタリックカラー、蛍光色など
特殊な色の見本帳もまた、紙だけでなく、金属類やプラスチックフィルム、布地、木材、建材など
異質な表面での発色を見るための見本帳も必要とされています。

「色を扱う」ということは現物を作り出す立場と写真やモニターを通して見る場合とではずいぶん違った側面が
あるというのが実際のようです。

カラーコーディネーターとしての実務は決して簡単な事ではなさそうですね。さまざまなアイテムを使って
実務をこなさなければならないということです。


さて、表題のご質問の回答になったかどうか。

ちなみに最近子どもたちの絵の具箱にパール入りの絵の具が入っていることがあります。
「百均」で見かけましたので、おそらくそこで購入しているのでしょう。

これが絵画表現に用いられ、ずいぶん絵の質感を落としているのです。

「物体の光沢は光沢感を生みますが、絵の具の光沢からは光沢感は得られない。」
絵画に金・銀・パールの顔料を絶対に使ってほしくないです。

先人の絵画に大いに学んでほしいと願ってやみません。
by my-colorM | 2006-06-18 14:53 | 色の話