絵の具を考える【U氏との出会い1】

この夏、二度目の東京でお会いしたU氏について、恩師K先生から大学時代に同じ彫刻科の同期だとお聞きしました。東京帰りで帰省した際に訪ね、近況報告をした時です。Uさんは気さくで、研究熱心な人だよと、教えていただきましたが、まさにその通りの人物でした。K先生の教え子だと聞けば、さらに面白い展開があったかもしれません。

さて、友人Kさんの紹介で、始めて訪ねていった見ず知らずの私に、時間を忘れるほど、いろいろと話してくださったU氏。その貴重なお話は、忘れないうちに書き留めなければいけません。

とはいえ、三時間半に及ぶ、ほとんど間断のないお話(失礼にあたるかと、メモをとることなく…)の、どこから書きましょうか。

まずは、訪ねるきっかけとなったことに関わる内容からいきましょう。

ウエマツ画材店は渋谷にあります。Kさんが紹介してくださったのは、日本画を生業にしているKさんに投げかけた、ふとした相談からでした。

中学3年生の授業で、日本画入門と称して、水干絵の具で描かせているが、それを溶く膠液が冬場には固まってしまい、制作に支障が出る。何かいい方法はないかしらというもの。すると、即座に「ならウエマツにいいのがあるよ。冬でも固まらないやつが」の返答。ご自分もよく使う材料だから、「興味があるなら行ってみる?」と言われ、頷きました。

その後、私の知らないところで社長のU氏にアポ取りを済ませ、「社長さん月曜日は2時から研究室に出勤するって。京都の○○さんていう中学の美術の先生が行くって伝えといたから。何なら夕方でもいいって…。」という。なるほど、行って聞くのが早いってことね。これは何が何でも行かなくては!…てな流れで渋谷を訪れたのです。

Kさんから言われた通りに店員さんに伝えると、宮益坂通のとある年代物のビルの十階に案内されました。そこに、社長室兼研究室がありました。

余りキョロキョロ見回すことも出来ず、簡単な自己紹介をすると、勧められるままに、部屋の中央にある作業用の大きなテーブルに向かい腰掛けます。U氏は色とりどりの瓶や容器が並ぶ、その向こうにもちょっとしたスペースがある重量棚を背に、テーブルの対岸に座られました。

「実は」と、早速、件の膠液の話を切り出しました。まずは私から、前提として、私が取り組んできている題材すなわち、卒業制作として、色紙(しきし)に墨彩画を描かせることとその意味、添え文のこと、一緒につくる篆刻のこと、制作の段取り、展示方法、準備物…などを一通り説明、日本画入門と称して、水墨画での練習をした上で、手本をもとにしつつ、アレンジも許して取り組んでいることなどについては特に詳しく話しました。

また、生徒がそれまでの経験の中で、この題材のように指で絵の具を溶くということはなく、多くの生徒にとっては、おそらく最初で最後の経験になるかも知れないので、今後も是非取り組んでいきたいのだという思いもお伝えしました。

そして、そんな大切な経験なのに、膠液が固まってしまい、絵の具作りがままならない状態を何とかしたい。画家は手元で湯煎しながら描くだろうけど、集団で、美術室という限られたスペースではどうにもならない。たまたま前々任者が残した水干絵の具がたくさんあるので、是非使いたい。これまでは7年前の膠液が残っていて、それがたまたま古くて変質し、サラサラだったために、昨年までは困らなかったが、新しく購入した膠液は、冬場の常温で容器の中で固まってしまい、容器ごと湯に浸けて溶かすことが出来ても、皿に小分けすると、途端に固まってしまい、絵の具を溶くどころではない状況で大変困っていること。等、諸々を説明しました。

U氏は、時折、質問を挟みつつ、私の話をうなづきながら、じっくり聞いてくださいました。ひと段落ついたところで立ち上がると、テーブルにいくつかの膠棒とシャーレに溶かして固まったサンプル、そして膠液の容器と透明なグルー、またその固まったサンプルのシャーレを次々に取ってきては私の近くに置きました。あぁ、これが膠ね。ほう、乾燥して固まるとこうなるのねと、それらを眺めている私。

そこへ、不意に質問。「膠を使うのは何故か?」
「はい。そのままでは粉状の絵の具が紙に定着しませんから、糊のようなものでしょうね。」
「その通り。膠はメディウム、つまり、接着剤ですね。」

続いて、グルーの話になりました。これが、氏が長年かけて開発して来られた、Kさんが言ってた例の画材なのでしょうか。

悪い癖ですね。ついつい長くなってしまいました。では、続きはまた。






by my-colorm | 2014-08-19 10:15 | 色の話