人気ブログランキング | 話題のタグを見る

発想トレーニング(イメージマッピング)法

今年度の小学校の授業が始まりました。

だいたい、出会いの授業は「発想トレーニング」です。

前回の授業では、「ブレーンストーミング法」に取り組みました。これは毎年行っている、与えられた形から①絵を完成させる②何に見えるかを言葉で説明するという2つのタイプの課題について、短時間によりたくさん、またできるだけ他の人とは違うユニークな発想を目指すという発想法です。毎回、初対面のオープニングの授業ながら、かなり盛り上がる楽しい取り組みとなるのですが、今年も子どもたちの授業の振り返りでは、「楽しかった?」「がんばれた?」「またやりたい?」の質問にほとんどの子どもたちが「とても」・「まあまあ」にマークしてくれました。

さて、今回は2回目の授業。実は、別のトレーニング法の授業を用意していたのですが、朝一番に校長先生から直々に絵画展への絵の出品を依頼され、全く考えていなかった課題を飛び込みで入れることになりました。いきなりテーマを告げられ、瞬間凍りましたが、ちょうど発想法を展開するつもりでしたので、急遽「イメージマッピング法」を取り入れて授業をすることにしました。このイマージマップというのは、いくつかの方法があるのでしょうが、昨年のキッズゲルニカで、「Love &Peace」の原画に取り組むときに提示した「イメージWeb(蜘蛛の巣)」を想定しています。子どもたちに自分で「Web」をつくらせようというものです。

校長先生から告げられた絵のテーマは「ふれあい」。ザクっとした、ストレートに絵に表すにはなんともハードルが高いテーマ設定といえます。これではいきなり苦手な子どもを作ってしまいそう。何とかとっかかりを築かなければなりません。僕にも私にもこれなら描けそうという材料を自分の手で見つけてもらいたいものです。

幸い授業までに1時間の空き時間がありましたので、まずは私自身がマッピングを試みることができました。

具体的にはメインワードである「ふれあい」を中央に書き、そこからいくつものの枝を伸ばして思いつくままに言葉の箱を増やしていきます。新たな箱からさらに一本または複数の枝を伸ばし、そこから連想される言葉を書き、さらに…といった具合に思いつくままどんどん「イメージワード」を引きだしていきます。

「ふれあい」から連想したイメージワードは「絆」「握手」「笑顔」「人」「動物」「心の」「人と人との」「友達」「家族」…。さらに二次、三次と言葉は増え、「キャッチボール」「チームワーク」「リレー」「スクラム」「応援」「結ぶ」「支え合い」「一緒に」「みんなと」…などとどんどん出てきました。具体的に絵にしていく言葉はそれらのイメージワードからふくらませていけば何とかなりそうです。



校長先生から朝の挨拶時のいきなりの提案でしたが、「できない」と決めつけず、与えられた残り時数でぐるぐると頭の中で制作過程を計算してみました。そう考えると今回が発想法を試みる最初で最後のチャンス。そこでこの連想法を「発想トレーニング」の第二弾として取り入れることにしたのです。

突然の変更で、PCも手元にないので、B4横で、手書きでワークシートを作りました。
書いたのは

  「発想を広げよう」
  (イメージマップ)

  「ふれあい」をテーマに絵をかきます。
   あなたならどんな絵をかきますか?

  ※思いついた「キーワード」を書き、
    さらに広げてイメージをふくらませましょう。

です。

その中心に「ふれあい」と楕円の中に書いておきます。そしてキーワードを書き込む楕円を子どもとの約束で「セル」と呼ぶことにしました。そのセルから複数の線(同様に、これを「糸」と呼ぶことにしました)を伸ばして別のセルを用意しておきます。空いたセルを埋めさせ、そこからは子どもたちが自由に糸を書き加え、セルを増やせるものとしました。

さて、授業が始まりました。前回の授業を簡単に振り返り、学習モードに切り替えます。そして、早速ウォーミングアップのため、クラス全員で連想ゲームを始めました。私がお題を最初の子どもに示します。すると指名された子どもが「○○といえば…」の続きで連想した言葉を言います。次の子どもを指名して、「では○○といえば?」とつないでいきます。これは「自由連想法」とでも名付けておきましょう。その場合ははじめのキーワードから離れても構わないとしておきます。なぜ自由連想を取り入れるのかというと、はじめのキーワードを固定した連想法だとすぐにアイデアが枯渇し、発想法を楽しむねらいが達成できそうにないと考えたからです。今回はイメージがどんどん膨らみ、それぞれが自分なりに限りなくアイデアを出すことができるのだという発見を、この授業の中で子どもたちにしてもらいたいと考えています。

「朝ご飯」をお題にしたら、「納豆」「味噌汁」「豆腐」と続きました。これは「キーワード」が固定されています。これでは、「朝ご飯何を食べた?」という単なるアンケートになってしまいます。これは、「時計」でも同じです。必ずと言っていいほど「針」「時間」「数字」のように「時計」に固執してしまうケースがでてきます。そこで、キーワードが次々に更新することを告げ、しきりなおします。「朝ご飯から宇宙に飛ぶことだってあるんだよ…」と。

このような仕込みをしてからプリントを配ります。先に挙げたようなねらいをふまえ、「ふれあい」からでているセルにキーワードを書かせていくのです。

最初は、指導者が簡単な例を示します。用意していったいくつかの言葉を見せ、「ふれあいといえば、○○」といくつか紹介します。「今の例で、ピンときた言葉からスタートさせてもいいし、自分で言葉を探してくれてももちろんいいです。」

制限時間を確認してからスタートを告げると、ゆっくりと言葉を吟味しながら子どもたちの鉛筆が動き出します。次のセルから伸びるセルがだんだん「ふれあい」から離れていってもかまわないということを助言します。
とにかく、今回はブレーキをかけることなく、書き続け、子どもの中からイメージやアイデアがあふれてくる感覚を体験することが目的なのです。

結果、2クラスともほとんどの子どもが熱中してセルを増やしていきました。ときどき詰まりそうになる子どもたちには、違うセルに飛んで、そこからまた続けるようにと助言します。異なるセルから延びるセルがどんどん別の食指を伸ばし、思わぬ展開をしながら成長していきます。そうしながらB4のプリントがところせましとばかりに言葉で埋まっていく様子は、T2でみてくださっている担任の先生にもおそらく頼もしく感じられたのではないでしょうか。他の何人もの子どもが裏面にも書き進めるほどの集中を見せる一方、中にはつまずき見せる子どももいます。そんな気になる子どもには気心の知れた担任の先生が、先生ならではの声かけをしてくださり、次第にその子どもなりに鉛筆を走らせるようになります。先生方にも様々な子どもに新鮮な可能性を見出すことができたものと思います。

子どもたちには、途中で「授業の終わり頃には、自分の頭の中で「爆発」が起こっているかもしれません。」と告げていました。言葉が次々とあふれ出し、絶え間なく手が動いている状態を指した状態が訪れるだろうということを「爆発」という言葉で表現したのです。実際、それがプリントの中であたかも爆発したかのような形で現れた子どももいました。一つのセルからいくつもの糸が出てあらゆる方向にセルが伸びた状態はまさに「爆発」です。

「セルが別のセルと関連する場合には糸をのばしてつないでもいいですよ。」とも声かけをしています。すると、プリントの中に無数の連携が形成され、まるでシナプスのモデル図のような形状を見せる例も出てきました。

こうして、終了時間を告げる頃には、どうしても湧いてくる言葉を書き留めたい欲求に指導者がブレーキをかけなければならないほどでした。授業の最後、子どもの表情は充実感に満たされていました。振り返りの結果もほとんど満足の様子。自分から思いがけずたくさんの言葉が出てきたことに驚いたという感想がいくつもありました。また、たくさん書けて楽しかったと感じたようで、素直に喜んでいる姿にこちらも嬉しくなりました。

さて、発想が「拡散」だとすると、構想は「絞り込み」です。ブレーキをかけることなく暴走し、時には爆発すら見せたアイデアですが、残念ながらそれらのほとんどは使いものにはならないでしょう。次にやることは目に見える無数の言葉のセルを①「(絵として)実現できる」②「テーマに即している」の条件でふるいにかけ、絞り込む作業です。

絵を描くにせよ、作文をするにせよ、はたまた大人が企画書などを書くにせよ、「拡散」と「絞り込み」をもって発想→構想の手順を踏んで具現化していきます。広げるのも多様なら絞り込みも多様な展開を見せるはずです。

こうした手順を踏むからこそ、一人一人の作品に多様なバリエーションが生まれるのです。借り物の発想や指導者の理想によって画一化された画面構成に私が違和感や不信感を覚えるのは、多様な子どもの可能性に目を向け、立脚するからに他ありません。人にある程度の傾向やタイプ分けが認められるとしても、名前や顔かたちの違いと同等の、発想・構想の多様性を無視することはできないと思うのです。



次回の授業は画面に取り入れるアイテムづくり→画面構成です。絵を苦手と感じている子どもたちとどう向き合うか。

見てかくスケッチと想像してかくスケッチの双方の力を飛躍的に伸ばす画期的な方法というのがあれば…こればかりは決定打がなく、試行錯誤の連続です…。
by my-colorM | 2009-04-19 10:57 | 図工・美術科教育 | Trackback | Comments(3)
Commented by ジュエル at 2009-04-23 20:45 x
先日はありがとうございました♪
久しぶりにお会いできて、楽しかったです。
さて、イメージマッピング法。ちょうど、あるキーワードをテーマに、コンテスト用のポスターづくりを生徒たちにさせねばならないところでしたので、早速使わせていただきます(^^)
次の授業のお話しも、期待していま〜す!
Commented by my-colorM at 2009-04-25 10:20
こちらこそ、先日はありがとうございました。学会で活躍されている様子頼もしくお話を伺いました。色と香りを中心にした、脳における感覚の「物理的処理」「科学的処理」のお話(ご講義)も興味深く一々納得させていただきました。益々生き生きされてきたなぁと、まぶしいくらいでしたよ。
さて、ポスターづくりにはコンセプト形成が重要ですね。イメージマッピング法、大いに有効かと思います。成果があがるといいですね。
Commented by かおり at 2009-04-28 09:47 x
イメージマップ、以前にガールスカウトのリーダー講習で教えてもらったことがあります。
その時は、建物(橋本知事の件で話題になった青少年会館)の外へ出て
回りの「音」を耳をすませて聞き取り、
聞こえてきた鳥のさえずりや風の音、誰かの足音や車のエンジン音、遠くから聞こえる誰かの歌声…などを
自分の居場所(マップ中心点)を起点として、音の聞こえて来た方向へ
☆△×♪〇思いつく色んな記号を使って記録していく
というものでした。
マップが出来てから気付いたことは
心地の良い音とそうでない音とがあり、無意識に分別して記号を使い分けているという現象でした。
このイメージマップでは、自分にとっては心地良い「音」であっても
他人にとって必ずしもそうでない「音」かもしれないということ
また自分自身もその「音」を何かしら発生している一人だということ
学び考えるためのプログラムでした。
私たちが使用したのは鉛筆だったので、色鉛筆を使うとまた違った発見があるかもしれないですね。
mayuさんのお話により、思い出した上に活用の幅が広がった気がします^^